『花咲舞』小田玲奈Pが問う 「女性の社会進出は本当にアップデートされたのか?」
小田玲奈が“令和版”だと感じた舞の反応
ーー会社のコンプライアンス意識などはどの時代を基準に描いているのでしょうか?
小田:旧シリーズを放送した2014年の頃から、銀行は古い体質なんだというセリフがありましたし、そこはいまも変わらないと取材を通して知りました。私が今回の『花咲舞が黙ってない』で描きたいことのひとつは、女性の社会進出に対する意識はほんとうにアップデートされているのだろうかということなんです。たとえば、第1話だと、羽田支店長の藤枝賢造(迫田孝也)は女性に対して表面上ではそれほど当たりが厳しくはありませんが、舞の異動にあたって「アシスタントとして頑張って」と言います。本心では女性である舞を見下しているんですね。台本を読んだとき現代性があると感じたのはそこでした。舞はその場で、アシスタント扱いされたことに反論はしませんが、実はその言葉に引っかかりを覚えていて、あとあと「お言葉を返すようですが」とぶちまけます。旧シリーズだったら、そういうものだと受け入れていたでしょうし、おそらく、私自身もその反応に違和感を覚えなかったのではないかと思います。でも今回の舞は、言われた瞬間にその言葉に傷つく意識を持っているんです。その場では黙っていましたが、そのまま飲み込むことなく、ここぞというときに言葉にする。そこが令和版かなと感じました。
ーー旧シリーズの舞(杏)の「お言葉を返すようですが」にはためらいがあり、新シリーズの舞はストレートだと感じたのはそういうわけかもしれないですね。
小田:第1話では、今回の舞は迫力があるという感想がSNSでありました。でも、第2話では、会社に裏切られて退職せざるを得なくなった行員・畑仲康晴(三宅弘城)の気持ちに寄り添いながら「裏切り行為です」と言うときは、第1話とは全然違っていて、ちゃんと社員に寄り添えているんです。今回の舞は、相手に寄り添うように「お言葉を返すようですが」とも言うし、ほかにもいろいろなお言葉の返し方があります。
ーーそれは毎回、気になりますね。
小田:第1話では、台本にも書いてあるのですが、自分の思ったことをすぐに言うのではなく、言葉に出せない人たちの代わりに言い、そうすることで社会をより良く変えるのだという覚悟をもっているんです。今田美桜さんは台本の意図を読み込んで体現しています。美桜さん自身もそういう言い方をすることで舞になれたと思うんです。私も見ていて、これなら視聴者に受け入れてもらえると思いました。「お言葉を返すようですが」は悪を成敗するだけの言葉ではない。この先の第6話では、優しい「お言葉を返す」もあります。敵のような人に対する言い方ではないというのは、美桜さんの演技を見て、やってみたいと思ったんです。それだけ美桜さんの舞に新しさを感じています。
「女性CPが活躍しているドラマ制作部は、今、自慢できる部署です」
ーー旧シリーズは水曜日で、今回は土曜日放送ですが、視聴者層は違いますか?
小田:水曜日と土曜日の視聴者は若干違います。とはいえ、この作品は土曜21時にもフィットすると思っていましたから、旧シリーズとやっていたことを変えようとは考えていませんでした。土曜21時の枠はかつて『家なき子』『金田一少年の事件簿』『ごくせん』など、名作の数々が放送されていた枠です。それが今回、復活するにあたり、日本テレビを代表する枠にもう一度なるための一発目として、日本テレビを代表するドラマである『花咲舞が黙ってない』をやれたことは心強くもあり、絶対に失敗するわけにはいかないという気持ちです。
ーー小田さんは日テレで大ヒットドラマを作り続けています。そうなった理由はどこにあると思いますか?
小田:私が最初に配属されたバラエティーの制作部では、女性スタッフの人数もチャンスも少なかったのですが、ドラマ部では、ドラマは女性が多く観るものだし、同性のほうが視聴者の気持ちがわかるだろうと思われたのか、プロデューサーをやるチャンスがもらえました。そのとき思い浮かんだのは、バラエティーの総合演出をやっていたスタッフたちが、これが当たらなかったら次にやらせてもらえないと一作一作必死でやっている姿でした。バラエティーでは総合演出をやれなかった私が、ドラマでもらったチャンスを絶対に逃すわけにはいかないと思ってデビュー作に取り組みましたし、以降もそういう気持ちでやってきました。その後女性Pが増えて、女性CPが活躍しているドラマ制作部は、今、自慢できる部署です。先輩たちの思いを引き継ぎながら、後輩を後押ししたい。この流れで女性がジャンジャン出世したら日テレはカッコいいと思います。
■放送情報
土ドラ9『花咲舞が黙ってない』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
TVer、Huluにて、地上波放送後配信
出演:今田美桜、山本耕史、飯尾和樹(ずん)、要潤、菊地凛子、上川隆也ほか
原作:池井戸潤 『花咲舞が黙ってない』(中公文庫/講談社文庫)、『不祥事』(講談社文庫/実業之日本社文庫)
脚本:松田裕子、ひかわかよ
演出:南雲聖一
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:小田玲奈、鈴木香織、能勢荘志
シリーズプロデューサー:加藤正俊
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
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