ゲームの映画&ドラマ化を成功に導くスペシャリスト PlayStation Productionsの仕事に迫る

 今や映画・ドラマの一大トレンドとなったゲーム原作作品。特に、2023年に配信されたドラマ『THE LAST OF US』のエミー賞受賞をはじめとする歴史的快挙は、記憶に新しいのではないだろうか。

 『THE LAST OF US』『グランツーリスモ』『アンチャーテッド』などソニーが手がけた数々の人気タイトルが相次いで実写化され、そのどれもが興行的成功を記録した。その背景には、2019年に設立された「PlayStation Productions」の存在がある。

 PlayStationが持つIPの映画化・ドラマ化を推進するチーム、PlayStation Productions。その統括責任者であるアサド・キジルバッシュ氏に、ゲームの映像化を推し進める目的や今後の展望について聞いた。

今活躍するクリエイターのほとんどがゲームをプレイして育った

アサド・キジルバッシュ氏

ーーPlayStation Productionsは、どのようなチーム体制で動いているのでしょうか?

アサド・キジルバッシュ(以下、キジルバッシュ):私たちのチームは、ゲームに対する知識と情熱も持つ、経験豊富な映画およびテレビのプロデューサーで構成されています。その主な役割は、私たちのIPに適したクリエイターを見つけ、彼らと協力してドラマや映画を制作することです。良いドラマや映画の脚本ができたら、ソニー・ピクチャーズのクリエイティブ幹部と協力して企画化し、制作を進めます。

ーーPlayStation Productionsは2019年に設立されていますが、その背景にはどのような経緯があったのでしょうか?

キジルバッシュ:以前から、私たちのゲームIPを活用して新しいオーディエンスにリーチしたいという思いがあり、当社(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)は、ゲームIP展開の専門組織であるPlayStation Productionsを設立しました。PlayStation Productionsは同じくソニーのグループ会社であるソニー・ピクチャーズと協業し、ゲームIPをベースとした映画・ドラマ制作を行っています。ゲームIPの映画やドラマへの展開を決定した背景としてまず、今活躍する最高の映画やテレビのクリエイターのほとんどがゲームをプレイして育ち、ゲームに情熱と敬意を抱いていたことが挙げられます。また、最近のゲームは映画により近づいていて、ストーリーやキャラクターが豊かになり、ゲームの素材がこれまで以上に映像化に適したものになっていることもあります。

『THE LAST OF US』© 2023 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO®️ and related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc. © 2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

ーーこれまでのプロジェクトで、やりがいを感じた瞬間を教えてください。

キジルバッシュ:私にとって最も思い出深い経験の一つは、2019年にクレイグ・メイジンと初めて出会ったときです。私は、彼が脚本を手がけた『チェルノブイリ』の大ファンで、いつか一緒に仕事をしたいと心から望んでいました。そして初めて会ったとき、彼の『The Last of Us』への情熱と知識に完全に圧倒されました。彼はこのゲームを熟知していて、それをテレビシリーズでどのように忠実に伝えることができるかについて、非常に明確なビジョンを持っていました。

ーー『グランツーリスモ』『アンチャーテッド』『THE LAST OF US』など、映像化された作品について、人気以外に共通する要素はありますか?

キジルバッシュ:これまでにリリースした映画やドラマを私が気に入っている理由の1つとして、全てがユニークでそれぞれがまったく異なっていることが挙げられます。映画『グランツーリスモ』は実話を基にしたストーリーですし、『アンチャーテッド』にはゲームの世界観の中で作られたオリジナルストーリー、そして『THE LAST OF US』にはゲームに忠実に作られたストーリーがあります。成功のための決まった方程式はなく、すべてのプロジェクトは異なっているのです。唯一の共通点は、高品質を目指し、ゲームIPを尊重し、元の素材をベースに広げていくという点です。

『グランツーリスモ』©2023 Columbia Pictures Industries, Inc. and TSG Entertainment II. All Rights Reserved.

ーープロジェクトに参加するクリエイターはどのように選定されているのでしょうか?

キジルバッシュ:私たちが選んだクリエイターは全員、ゲームに対して深い情熱と敬意を持っています。ほとんどの場合、彼らは子どもの頃からゲームをプレイしながら成長し、今ではゲームとテレビ・映画制作への両方の情熱を組み合わせることで、素晴らしい作品を完成させる才能を持っています。クリエイターを選ぶ際の重要な要素は、その素材についてどれだけ知っているかです。ゲーム自体のファンである彼らだからこそ、元のゲームのどの部分を残してどの部分を省くのかという判断が信頼できるのです。その良い例が、『ツイステッド・メタル』をプレイして育ったマイケル・ジョナサン・スミスです。彼の原作に対する愛と情熱が、ドラマ版の脚本の随所に表れ、輝きある作品に仕上がったと思います。

ーー原作への理解と愛情が、良い作品づくりにつながるのですね。

キジルバッシュ:もう1つの重要な要素は、ゲームをどのように映画やドラマにさせたいのかについての説得力のあるビジョンです。ソニーでは、クリエイター主導であることを尊重し、プロジェクトに自分たちの創造的欲求を押し付けようとすることは決してありません。アイデアやビジョンは、テレビ/映画の制作者から湧き出たものであることが重要です。

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