『イップス』は“考察ブーム”の逆を走る 第5話までのタイトルを公開した意図とは?

 篠原涼子とバカリズムがW主演を務めるフジテレビ金9ドラマ『イップス』が面白い! 4月12日に放送された第1話で、心をグッと掴まれた人も多いのではないだろうか。

 本作は、小説が書けなくなったミステリー作家・黒羽ミコ(篠原涼子)と、事件が解けなくなったエリート刑事・森野徹(バカリズム)がバディを組み、容疑者が仕掛けたトリックを暴いていく……という物語。バカリズムと若手時代から苦楽を共にした放送作家・オークラが脚本を務めていることもあり、森野のキャラクターが魅力的で、バカリズムとオーバーラップすることもある。ミコとのかけあいもたまらなく面白く、第2話以降もふたりを追いかけたい、と改めて思った。

 
 そんな『イップス』は、古くは『刑事コロンボ』、『古畑任三郎』などでも知られている倒叙ミステリー(先に犯人や犯行シーンが明かされる作品)のプロットを採用。視聴者は犯人が分かった状態で、主人公たちの推理、トリックの解明、犯人の心の機微などを楽しむことができる。

 犯人が分かった上なので、ミコと森野の推理や会話が横道に外れても面白いし、そのままレールに乗って犯人やトリックに気づくのも面白い。視聴者がふたりを応援しながら観られるのも倒叙ミステリー×コメディ作品の魅力だと思う。第2話は人気配信者が犯人。世代が違う犯人とのバチバチのやりとり、ミコと森野の関係性が深まった上での“篠原とバカリズムの会話劇”など、見どころは盛りだくさんだ。


 そんな物語の面白さ、役者たちの演技はもちろんのこと、演出面にも工夫が凝らされていた。メガホンを取るのは、バカリズムが脚本を務めた『素敵な選TAXI』(カンテレ・フジテレビ系)の筧昌也。同じく演出には、『最高の離婚』(フジテレビ系)、『問題のあるレストラン』(フジテレビ系)の並木道子、『ミステリと言う勿れ』(フジテレビ系)の相沢秀幸も名を連ねた。この3人が担う作品はどれもが名作であり、演出面、各作品における世界観の構築が見事だったように思う。“ミステリーコメディ”と銘打っている『イップス』にも、そんなチームのエッセンスが加えられていた。

関連記事