『厨房のありす』は“信じられる”ドラマだった 門脇麦の愛に溢れた“リアル”な演技

 そして、「信じられるもの」というキーワードは、このドラマの評価にも直結している。本作のありすを、ASDと日々向き合いながら真っ直ぐに生きる女性として「信じられる存在」にしているのは、何といっても主演の門脇麦の演技だ。化学式を読み上げる特徴的な早口での長台詞や、ありすならではの細かい仕草の数々は、言うまでもなく視聴者の心に深く刻まれたに違いない。ありすの特徴については、「わかる!」「ついありすを応援したくなる」と、実際にASDの当事者からもブログやSNSで共感の声が上がっている。

 こうした「特性」をエンタメ作品で扱うことは、場合によっては炎上のリスクも伴うが、本作のリアリティのある門脇麦の演技が多くの当事者の心をも動かしたのだろう。そして何より、愛を持ってありすの存在が描かれていることが、当事者だけでなく広く視聴者の心を掴む大きな理由となったように思う。

 とはいえ、第1話時点で、ありすがこんなにも成長するとは誰が思っただろうか。それはもちろん、心優しい倖生(永瀬廉)や“お父さん”としてありすを真っ直ぐに愛し続けた心護(大森南朋)の存在があったから。第1話から最終話まで、「信じたい」と思わせてくれる人たちと積み上げた時間が、あの店には確かに存在している。それは、まるで具材から丁寧に仕込まれた一品のように、時間をかけて積み重ねられたものだ。

 『厨房のありす』を観終えた今、「本作がどんなジャンルのドラマだったのか」を言葉にするのはもはや野暮なのかもしれない。それでもあえて言うとしたら、一つのジャンルに収まらない多様な要素が調和した、“料理のようなドラマ”という言葉に帰結するのだろう。

■配信情報
『厨房のありす』
TVer、Huluにて配信中
出演:門脇麦、永瀬廉、前田敦子、大東俊介、北大路欣也(特別出演)、皆川猿時、萩原聖人、木村多江、大森南朋
脚本:玉田真也
音楽:横山克
演出:佐久間紀佳、鈴木勇馬
プロデューサー:鈴間広枝、諸田景子、松山雅則
チーフプロデューサー:三上絵里子
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
©日テレ
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