『厨房のありす』2つの事件の真相が明らかに ありすと倖生を包む優しさに見えた“希望”

 五條製薬で25年前に起きた火事と、9年前の横領事件の真相と向き合う決心を決めたありす(門脇麦)と倖生(永瀬廉)は、五條製薬の創立記念パーティー会場に乗り込む。『厨房のありす』(日本テレビ系)最終話では、ついに2つの事件の真犯人が明らかに。そこには、残酷な事実と、やさしい真実が隠されていた。

 蒔子(木村多江)から本当の父親が誠士(萩原聖人)であることを聞かされたありす。改めて本人に問い詰めると、誠士はあっさりとそのことを認めた。さらには、事故に見せかけて未知子(国仲涼子)を殺した犯人が心護(大森南朋)であることを告白。また晃生(竹財輝之助)が横領したのは事実であり、その理由は心護に金を無心されていたからだと堰を切ったように語り始める。けれど、ありすには違和感があった。心護には2人を死に追いやる動機がないからだ。

 にわかには信じがたい事実にありすたちが困惑する中、ボイスレコーダーを持った心護が現れる。心護もまた、蒔子(木村多江)と道隆(北大路欣也)に本当のことを打ち明けるべく会場に来ていたのだ。ボイスレコーダーから聞こえてくるのは誠士と晃生の声。それは誠士が未知子を殺したことを裏付ける会話だった。

 25年前、同じ研究チームだった未知子と誠士は恋人同士だった。しかし、一研究員に過ぎない誠士に対し、未知子は五條製薬の令嬢で、なおかつ化学の天才だ。道隆が2人の交際を認めるはずはなく、やがて未知子はありすを妊娠するが誠士のためにも一人で育てることを決意。誠士は、道隆に認めてもらえるくらい立派な研究者になったら結婚しようと誓った。

 けれど、そんな時に蒔子から告白されて欲に目が眩んだのだろう。心護の名前で発注したジエチル亜鉛を使い、未知子を殺害した。未知子が長年時間をかけて進めてきた鎮痛剤の研究データを盗むために。未知子を火事から助け出した際に開発を託されたと嘘をつき、誠士は五條家に取り入った。

 さらには、鎮痛剤の臨床試験データ改ざんを柳田医師(半海一晃) に依頼するにあたって、会社のお金を手に入れるために晃生に横領の罪を着せた誠士。未知子の死の真相を知る晃生が邪魔だったのもあるだろう。誠士は真実を明らかにしたら、息子はどうなるか分からないと脅し、晃生に罪を被らせようとした。けれど、晃生にはできなかった。自分を尊敬してくれている倖生を失望させたくなかったから。罪を被れば、倖生は身の安全を保証されこそすれ、一生横領犯の息子として生きていくことになる。それも避けたかったのではないか。だからこそ、晃生は心護に真相を託したのだ。そこには自ら命を絶つ以外の選択肢を選ぶことができない自分の弱さを悔いると同時に、そんな自分にも一つだけ誰にも負けないことがあると書いてあった。

「倖生、誰よりも、お前を愛している」

 本音を言えば、生きて晃生の成長を見守ってほしかった。晃生が願っていたように、倖生がありすを好きになり、不器用ながらもありすのために奮闘し、倖生もまたありすの言葉に何度も救われ、2人で支え合ってきた日々を見てほしかった。どんなに願っても、それは叶わない。だけど、「自分が生まれてきて幸せになった人はいない」という罪の意識を背負ってきた倖生は、9年という長い年月を経て届いた晃生の言葉に救われる。晃生は心から倖生を愛していた。その確かな証を倖生が得ることができて本当に良かった。

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