『ドラゴンボール超 ブロリー』は“歪な構成”の傑作アクション作 最高の無茶苦茶を堪能せよ
その果てに「カカロット! ブロリー! ゴーゴー! ウワーッ! ソイッ! かめはめ波!」という『ドラゴンボール』の「Techno Syndrome」みたいな曲が流れ始めた時は変な笑いが漏れた。あの曲は一体なんだろうか。失礼ながら滅茶苦茶ブチ上がった。あらゆるアクション映画であの曲を採用してほしい(例えばトム・クルーズが無茶なスタントをし始めたら「トム・クルーズ! ゴーゴー! ウワーッ! ソイッ」と流してほしい)。それに本作を「悟空とベジータがブロリーをTest Your Mightする映画」と考えると、『ドラゴンボール』の「Techno Syndrome」が流れるのもロジックとして理解できる。
とまあ「状況設定」と「バトル」が綺麗に半々で別れた無法の極みすぎる構成の映画なのだが、このハイテンションをずっと維持する技術がとにかく凄いのは明らかで、またアクションによって作画の方向性が違うのも面白い。ベジータと悟空が段階的にスーパーサイヤ人になり、ブロリーが急成長しまくるのも『ドラゴンボール』のインフレの歴史を包括しているようで、実のところ『ドラゴンボール』という作品を改めて見つめ直した作品なのかもしれない。見つめ直した作品で、こんな無茶な構成になるのは明らかにおかしいのだが……。国民的作品がこんな無法な大アクション映画でいいのだろうか? いいんだ。だって最高に楽しいから。
バトルの話ばかりしてしまったが、本作はバトル以外にも見どころがある。チライがかわいいとか。ストーリーが無いようで実のところ三者三様の親子の物語を描いており、途中殴り合いに熱中しすぎて親子の物語が吹っ飛んでしまうものの、その帰着として最後の名乗りが結構グッとくるとか。チライがかわいいとか……。あと個人的にちょっと面白かったのが、完全にギャグキャラと化していたフリーザ様が最後普通に異星の住民を虐殺していたところだ。自分は観ていないのだが『ドラゴンボールZ 復活の「F」』(2015年)で改心したのかなと思いきや全然そんなことなかった。普通に邪悪だった。でもギャグキャラ化のほうが白けるので邪悪でいてくれて嬉しかった。ありがとうフリーザ様。これからもずっと邪悪でいてほしい。
『ドラゴンボールZ 超戦士撃破!!勝つのはオレだ』を観て虚しさを覚えた過去の自分はもういない。なぜなら『ドラゴンボール超 ブロリー』を観たのだから。映画の尺が100分ほどあるし、ブロリーもドロドロにならない。そして映画の半分、特に戦う理由はないがずっとバトルしている……。なんだこれ。やっぱ変な映画かもしれない。でも最高に楽しい映画だった。いくらなんでも構成が無法の極みすぎるのだが、これを受け入れるデカい懐があるのが『ドラゴンボール』という国民的ビッグタイトルなのかもしれない。
■放送情報
『ドラゴンボール超 ブロリー』
フジテレビ系にて、1月27日(土)14:35〜放送
※関東地方の一部地域にて
原作・脚本・キャラクターデザイン:鳥山明
監督:長峯達也
作画監督:新谷直大
音楽:住友紀人
美術監督:小倉一男
色彩設計:永井留美子
特殊効果:太田直
CGディレクター:牧野快
製作担当:稲垣哲雄
製作:「2018 ドラゴンボール超」製作委員会
配給:東映
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