『うちの弁護士は手がかかる』は唯一無二な作品に 最終回ラスト6分はやりたい放題?

 そして、冒頭で先述したラスト6分は、岩渕(日向亘)主催の香澄法律事務所のクリスマスパーティー。蔵前が扮するサンタの登場に、杏は童心に帰り、無邪気に大興奮。サンタの髭が取れ、杏は我に帰るも、蔵前からのクリスマスプレゼントのROLEX「カメレオン」に上機嫌。最終回の序盤で香澄法律事務所の面々に頭を下げていたのも、蔵前に素直に「ありがとう」を言えるようになったのも、杏の大きな成長だ。

 蔵前の元カノの安藤カオリ(安達祐実)が“山P”こと山崎(松尾論)と付き合っているという衝撃の事実がありながら、クリスマスパーティーが開幕。丸屋(酒向芳)と岩渕のオタ芸、今日子(戸田恵子)の「天城越え」、辻井(村川絵梨)のテーブルクロス引きと、出し物が続いていく。

 そんなワチャワチャを眺めながら、蔵前は「先生。来年も一緒に」とつぶやき、それに杏は「来年も?」と聞き返す。自然と見つめあった2人は、笑みを浮かべながらコクリと頷く。出し物のステージに向かっていく蔵前を横目に、杏が見せる幸せそうな表情と「どうやら収まるところに収まったようです」というナレーションをどう受け取るかは、視聴者の判断に委ねられているように思える。

 そして筆者が困惑してしまったのが、本作のラストがまさかの『勇者ヨシヒコと魔王の城』(テレビ東京系)のメレブ(ムロツヨシ)が登場し、「メリークリスマス。うむ」というセリフで終幕となったことだ。衣装はテレビ東京から借りてきたのかなど、クエスチョンはいくつも浮かぶが、このやりたい放題な一面も、ユニークで、『うち弁』を無二な作品として決定づける魅力となっていた。

 ムロツヨシ本人は気にしているようではあるが、腹膜炎のため入院し、仕事復帰を果たした後の第4話以降からは特に逆風すらも追い風として味方につける、演出や脚本が光る作風へとギアチェンジ。それが顕著に表れていたのが、多彩なテレビや映画のパロディネタだった。『逃走中』(フジテレビ系)との公式コラボやダブル浅野が登場した第8話はやりすぎな感じも否めないが、その行き着く先が最終回の戸田恵子の『ショムニ』(フジテレビ系)、そしてムロのメレブ。というか、パロディを超えて、本人が登場してしまっている。

 これはやはり第4話辺りから筆者が思い始めていたことだが、またこのチームが集まっているところを、“くらあん”コンビ、“てちムロ”コンビが2人仲良く並んでいるところを見たい。いつかのメリークリスマスになるのだろうか。「また会う日まで」という言葉を信じて。

■配信情報
『うちの弁護士は手がかかる』
TVer、FDOにて見逃し配信
出演:ムロツヨシ、平手友梨奈、吉瀬美智子、菅野莉央、日向 亘、安達祐実、村川絵梨、松尾諭、大倉孝二、酒向芳、戸田恵子、江口のりこほか
脚本:服部隆、おかざきさとこ、西垣匡基
演出:瑠東東一郎、相沢秀幸
プロデュース:金城綾香
主題歌:ザ・ローリング・ストーンズ「アングリー」(ユニバーサル ミュージック)
制作:フジテレビ ドラマ・映画制作部
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/uchiben_kin9/
公式X(旧Twitter):@uchiben_kin9_cx
公式Instagram:@uchiben_kin9_cx

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