『ブギウギ』六郎の死を通じて喪失に向き合ったスズ子と梅吉 2人の東京生活を振り返る

 羽鳥(草彅剛)は「大空の弟」を……六郎の死で頭も心もいっぱいなスズ子に、そのことを歌わせることで思い切り悲しみを感じさせようとする。辛いことは見て見ぬふりした方が楽なように思っても、本当はこんなふうにとことん辛さを味わってとことん悲しみに向き合う方が心が健康的なのだと。悲しみを否定せずに、抱きしめるから向き合える自分の気持ちと未来があるのだと、スズ子は羽鳥の書いた歌から学び、それを聞いた梅吉もようやく妻と息子の死を受け入れるに至った。会場に現れた六郎の姿。あれは以前スズ子を訪ねてやってきた時に、東京の舞台を今度絶対に観に行くと言ってた彼が約束を果たした姿だった。だからこそスズ子は六郎のために笑顔を見せて「ラッパと娘」を全身全霊で歌う。趣里の感情のこもった歌唱は圧巻で、何度も劇中で歌われるこの歌が一度も同じように聞こえない理由に気付かされる。

 そして本当の意味で親子の絆を取り戻した梅吉は、香川へと旅立った。このまま東京にいては、スズ子の稼ぎで食わせてもらうしかない。彼の旅立ちは、かつてツヤの死を受けて娘ではなく「福来スズ子」としての自分を探すことを決意したスズ子のように、夫であり父である自分ではなく、梅吉としての自分に挑戦する意味もあるように感じる。別々の道を歩むことになった2人が、これからどんな新しい自分に出会えるのか見守りたいところである。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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