朝ドラ『ブギウギ』に片山友希が与えるリアリティ 抑制のきいた演技がもたらす効果とは

 和希はUSKに入った当初からプライドの高い少女だった。だからといって高慢な性格だなどというわけではない。自身にとって譲れないポイント、それ以上は後ろに下がることのできないラインというものを持っていて、弱音も吐けない人間なのだ。そんな人物が、後輩の、それも他所からやってきた人間に自分の立場を脅かされているわけであって、これは想像しただけでもかなりキツいものがある。秋山がみんなの前で手本の踊りを披露した際、和希が流した涙をあなたは見逃さなかっただろうか。

 伊原六花の全身を使った大きなパフォーマンスに呼応するように、片山は涙を指先で拭うという小さなパフォーマンスを展開させていた。和希の内面を表現する方法はほかにいくらでもあったはずだが、増幅する彼女の感情を最小限の表現に片山は留めていたのだ。こういった見逃しかねない“細部”にこそ、人間ドラマのリアリティというものは宿っているだろう。片山はさっそく本作に劇的な展開を持ち込み、そのうえそこにリアリティを与えることで、作品全体の強度を高めることにも貢献しているのだ。

 花田鈴子から福来スズ子の物語へとバトンが渡ったばかりだが、早くもこうした手練れの俳優にしてやられている。

 そんな片山は、ここ数年で一気に頭角を現してきた存在だ。個人的には『ここは退屈迎えに来て』(2018年)で快活な女子高生役を自然体で演じていたのが印象に残っているのだが、『茜色に焼かれる』(2021年)や『フタリノセカイ』(2022年)など、“ありのまま”では決して体現することのできない強いメッセージ性を持ったキャラクターにも挑み、私たち観客へと作品を届けてきた。より多くの人々の目に触れる朝ドラ『ブギウギ』での活躍によって、間違いなく彼女は次のステップに進むことになるだろう。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供=NHK

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