ただ、『ONE PIECE』と『名探偵コナン』が『サザエさん』『ドラえもん』『ちびまる子ちゃん』『クレヨンしんちゃん』と決定的に異なるのは、原作者が存命で、そしていつか終わる物語を描いているところだ。長谷川町子が亡くなっても『サザエさん』ではアニメで磯野家の変わらない日常が描かれ続けている。『ちびまる子ちゃん』でも、さくらももこが遺した世界観を受け継いで、昭和50年頃の日本に暮らした子供たちの日々が紡がれていく。

　藤子・F・不二雄や臼井儀人が亡くなった後も連載が続き、アニメも放送され映画も毎年のように作られている『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』も、存在してることが普通になっていて、そして存在し続けることを誰も疑わなくなっている。すっかり日常に溶けこんでいるこれらのアニメこそ、国民的という称号を冠されるにふさわしい作品だとするならば、『名探偵コナン』や『ONE PIECE』は少し立ち位置が違ってくる。

　加えるなら、『名探偵コナン』はひとつの事件を描いては解決し、次の事件へと進むことで終わりの時をどこまでも先に設定できる。『ONE PIECE』は違う。ストーリー漫画であり、結末が想定されていて少しずつでもそれに向かって進んでいる。来年再来年とは言わないまでも、遠からず終わりを迎えるだろう。そうなってしまった時に、生活に溶けこんで存在するという意味での“国民的”な枠から外れてしまう。

　だから『ONE PIECE』は国民的ではないかというと、歴史に名を刻みファンの心に感動を刻んだ作品を、もはや国民的ではないとは誰も言えない。今は連載も放送もされていなくても、『鉄腕アトム』は国民的な漫画であり、アニメだと言って反対する人がいないのと同じ領域に、『ONE PIECE』も入ることになるだろう。これから続編が作られる実写ドラマの評判も加わって、もっと違った未踏の領域に入り込むかもしれない。

　そうなった『ONE PIECE』にふさわしい称号は何だろう。

■放送情報
アニメ『ONE PIECE（ワンピース）』
フジテレビ系にて、毎週日曜9:30～10:00放送
キャスト：田中真弓、中井和哉、岡村明美、山口勝平、平田広明、大谷育江、山口由里子、矢尾一樹、チョー、宝亀克寿ほか
原作：尾田栄一郎『週刊少年ジャンプ』（集英社）連載
制作：フジテレビ、東映アニメーション
©︎尾田栄一郎／集英社・フジテレビ・東映アニメーション
公式サイト：https://one-piece.com/
公式X（旧Twitter）：@OPcom_info