『らんまん』主人公と冒険に出るヒロインは私たち自身だ ムロツヨシが図鑑完成の助っ人に
約束を果たす。あらかじめ定められた運命ではなく、人と人が出会い、言葉を交わす中で生まれた誓いを、なんとしてもやり遂げようとする決意が、万太郎(神木隆之介)を動かしていた。
ムロツヨシ『らんまん』サプライズ出演 「大河のほうも朝ドラのほうも盛り上がるかなと」
9月29日(9月30日は1週間の振り返り)に最終回を迎えるNHK連続テレビ小説『らんまん』。第129話にムロツヨシがサプライズ登…
『らんまん』(NHK総合)第129話。寿恵子(浜辺美波)の病状は原因不明の疾患だった。憂愁の色が濃い槙野邸で、万太郎は植物図鑑の完成を急ぐ。3205種を掲載する図鑑は手を加える点が多々あり、一人では間に合わないと考えた万太郎は、友人たちに助力を頼んだ。植物画は野宮(亀田佳明)、解説は一番弟子の虎鉄(濱田龍臣)が手がけ、菌類は藤丸(前原瑞樹)、校正は波多野(前原滉)の研究室の大学院生が分担。過去に植物採集の会で知り合った理科教師の小畠(ムロツヨシ)と鳥羽(杉本凌士)も駆け付けた。
復興局の務めを終えた佑一郎(中村蒼)は、誰もが手に取ることのできる和名の索引づくりを申し出た。夜半に『シェークスピヤ全集』を届けに来た丈之助(山脇辰哉)は、作業の合間に自身の夢である演劇博物館を建てる構想を明かした。机を並べる作業部屋はさながら植物学の研究室のようで、寿恵子は、座敷のにぎわいに根津の十徳長屋を思い出していた。ここに集まった誰もが万太郎を慕い、植物を愛する万太郎に触発されて、それぞれ金色の道を歩んできた。
万太郎が植物図鑑の完成を急いだのは、寿恵子のためだった。日本中の植物を掲載した図鑑を作ると万太郎は寿恵子に約束し、そのために万太郎は植物採集と研究に明け暮れ、寿恵子は万太郎を支えてきた。寿恵子の献身は、衣食住をはじめ、資金面や後世に伝えるための事業にまで及んだ。波多野が賞賛する「世界最高峰の植物分類学者」である万太郎があるのは、寿恵子がいたからだ。植物学者とその妻を描いた『らんまん』は、本質的にヒロイン寿恵子の物語といえる。