西脇彩華、NGT48 本間日陽、モト冬樹らが熱演 舞台『夕凪の街 桜の国』ゲネプロレポート

 舞台『夕凪の街 桜の国』東京公演のゲネプロが9月1日、新国立劇場・小劇場(東京・初台)で行われた。『この世界の片隅に』などで知られるこうの史代によって、広島への原子爆弾投下をテーマに描かれた同名原作マンガは2004年に刊行、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞や手塚治虫文化賞新生賞などを受賞し、高い評価を受けている。

 森岡利行の脚本・演出による舞台化は2017年に初演、以後再演を重ねて迎えた今回の公演では西脇彩華、本間日陽(NGT48)、森田涼花、松田幸起、中原和宏、モト冬樹らがキャストに名を連ね、東京公演に先駆けて8月には広島県民文化センター・多目的ホールでも上演された。本記事では東京公演直前に催された公開ゲネプロの模様をレポートする。

 2004年、名の売れない漫画家・石川七波(西脇彩華)は、父親・旭(モト冬樹)の挙動が近頃おかしいことを訝しみ、ある日ふらりと「散歩」に出かけた旭を尾行する。その道中で偶然出くわした幼なじみ・利根東子(森田涼花)とともに、旭の後を追いかけるまま高速バスに乗り、たどり着いたのは東京から遠く離れた広島の地。広島でさまざまな人を訪ねて回る旭の旅を通じて浮かび上がるのは、かつて広島で被爆し亡くなった彼の姉・平野皆実の面影だった。

 旭の広島行と重なるようにして描かれる、原爆投下から10年後の広島パートでは、平野皆実(本間日陽)が生きる日常と、その背後に色濃く影を落とす原爆の痕跡が物語られる。当時の流行歌にのせて歌い踊り、周囲の人々と笑い合う皆実らの姿からは、戦後復興へと歩む人々の活気も見て取れる。

 しかし、彼女が同僚の打越豊(松田幸起)と関わるなかで幸せへの手がかりに触れかけたとき、消えようのない過去が皆実の前に立ちふさがり、行く手を阻む。あの8月6日を経験した皆実にとって、自分たちは「“死ねばいい”と誰かに思われた」存在である。姉の霞(水谷彩咲)や妹の翠(倉河奈央)たちの悲壮な記憶を抱え、それでもなお前を向こうとする皆実を待つのは、さらに過酷な現実だった。最悪の戦禍をその身に背負いながらも、ささやかな日常へと手を伸ばそうとする皆実を演じる本間の切実な表情と佇まいは、本作に込められたメッセージを強く体現している。

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