妻の命を奪ったテロリストへの手紙を映画化 『ぼくは君たちを憎まないことにした』公開へ

 世界的ベストセラーを映画化した『ぼくは君たちを憎まないことにした』が11月10日に公開されることが決定。あわせて特報映像とティザーポスターが公開された。

 本作は、パリ同時多発テロで妻を失ったアントワーヌ・レリスによる手記を映画化したもの。2015年11月13日金曜日の朝。パリ中心部にあるコンサートホールのバタクランにて、アメリカのバンド、イーグルス・オブ・ザ・デスメタルのライブ中に3人の男たちが1500人の観客に銃を乱射し、立てこもった。少し前には、パリ郊外のスタジアムで行われていたフランス対ドイツのサッカー親善試合や周辺のレストランで過激派組織「ISIL」の戦闘員が自爆テロを起こしていた。バタクランには、アントワーヌの妻、エレーヌと友人がいた。安否確認すらままならないカオスの中で、2日後に判明したのは、友人は生き延び、エレーヌは犠牲となった受け入れがたい事実だった。

 誰とも悲しみを共有できない苦しみと、これから続くワンオペ育児への不安をはねのけるように、アントワーヌは手紙を書き始めた。妻の命を奪ったテロリストへの手紙は、息子と2人でも「今まで通りの生活を続ける」との決意表明であり、亡き妻への誓いのメッセージ。一晩で20万人以上がシェアし、新聞の一面を飾ったアントワーヌの「憎しみを贈らない」詩的な宣言は、動揺するパリの人々をクールダウンさせ、テロに屈しない団結力を芽生えさせていく。

 混乱するアントワーヌの内面を映画化したのは、マラソンに挑戦する老人たちをほのぼのと描いたコメディ『陽だまりハウスでマラソンを』のキリアン・リートホーフ。アントワーヌの手記は、メルヴィンと同じ年頃の娘を持つリートホーフ監督の心を打ち、監督はすぐさま映画化を決断。ドイツ人の立場からフランスで実際に起きた悲劇を客観的に見つめ、平明な言葉で憎しみの連鎖を拒絶するアントワーヌに焦点を当てた。

 主演を務めたのは、『万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-』で綾瀬はるかと共演し、『エッフェル塔 創造者の愛』にも出演したピエール・ドゥラドンシャン。負の感情と自らの言葉の間で苦悩する、感受性豊かなアントワーヌを演じた。妻のエレーヌ役にはシンガーソングライターでもあるカメリア・ジョルダーナ。2019年出演のアクション映画『レッド・スネイク』では、ISILを征伐する女性特殊部隊の一員として出演している。お風呂と絵本が大好きなメルヴィル役は、当時3歳だったゾーエ・イオリオが担当。子役コーチによる演技訓練や長時間にわたるリハーサルに耐え、母親の不在に悲しみの涙を流し、笑顔を忘れた父親を支える息子役を演じている。

 ティザーポスターには大きなタイトルと親子が抱き合う姿が配され、背中を向けるアントワーヌの力強い意志を感じさせるようなデザインとなっている。

映画『ぼくは君たちを憎まないことにした』特報映像

 特報映像には、愛する妻を突然失って悲しみに暮れるアントワーヌが、それでも小さな息子と前を向いて生きていこうと決意する姿が映し出されている。

 無差別襲撃から1年後の2016年11月12日。バタクランはエンターテインメントを愛する人々に支えられ、全面改装してスティングのコンサートで再オープンした。2023年現在も人気の会場として営業を続けている。

  ■公開情報
『ぼくは君たちを憎まないことにした』
11月10日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショー
監督・脚本:キリアン・リートホーフ
原作:アントワーヌ・レリス『ぼくは君たちを憎まないことにした』
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
2022年/ドイツ・フランス・ベルギー/フランス語/102分/シネスコ/5.1ch/日本語字幕:横井和子
©2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion nikumanai.com

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