『愛しのクノール』は『オクジャ/okja』の問いにリンク キュートで現代性のある名作に

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、ソーキそばが大好きな間瀬が『愛しのクノール』をプッシュします。

『愛しのクノール』

 主人公のバブスはある日、スパウトじいちゃんから誕生日プレゼントとして子豚をもらう。その子豚に「クノール」と名付けたバブスは小屋で寝食を共にし、毎日仲良く遊ぶうちにバブスとクノールには友情が芽生えていく。しかしスパウトじいちゃんは過去に「(手作り)ソーセージ大会」に出場していた元肉屋で、クノールの体重が増えていくことを異様なほどに喜んでいる……。

 本作は、愉快で暖かなストップモーション・アニメであることに間違いはない(クノールの笑顔がかわいい!)のだが、作品全体にどこか不穏な空気がずっと流れている。そして“家畜と人間との友情の物語”という筋にもどこかデジャヴを感じると思っていたのだが、それはポン・ジュノ監督による映画『オクジャ/okja』だ。

 『オクジャ/okja』は、山奥で心優しい巨大生物(オクジャ)と暮らしてきた少女・ミジャにまつわる物語。巨大生物は食肉用として大変優れた豚・スーパーピッグとされていて、あるときオクジャは企業の人間に無理やり連れ去られてしまう。ミジャはなんとかしてオクジャを取り戻そうとするが……という流れ。両作を観れば分かるが、とても通じるものがある。

 『オクジャ/okja』は食糧問題や動物愛護の観点から多くの議論を呼んだ。それは物語的な完結とは別にして、そこに描かれていたあらゆる問題が何一つとして解決していなかったから。“食べる者(オオカミ)”と“食べられる者(ヤギ)”の友情を描いた映画『あらしのよるに』でも、結局「立場が違う者同士の友情」という観点でみれば本質的な解決では全くなかった。

 そこに一つの回答を示したのが『愛しのクノール』である。本編終盤で「肉屋がなんたるが見せてやる」というセリフがあるが、“肉屋”はどんなソーセージを作り上げたのか。単なる子供向けアニメと思うなかれ、そこで導き出された答えについて多くの大人たちも考えさせられてしまうだろう。

関連記事