『ラストマン』数々のヒントが導いた人間ドラマの“運命” 物語の全貌を振り返る

 福山雅治主演、大泉洋共演で話題を呼んだTBS日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』。実は福山演じる皆実と大泉演じる心太朗が異父兄弟だという秘密が全ての元凶だった。

 最終回を前に2人が黒幕と睨んだのが、京吾(上川隆也)の妻・汐里(森口瑤子)の父である衆議院議員・弓塚敏也(石橋蓮司)だった。与党幹事長を歴任した政界のドンであり、清二(寺尾聰)とも昔から仲が良く、弓塚の犯罪に目をつむってきた。そして、弓塚は道路族出身の議員で、自身が関わる公共事業を進めるのに皆実(福山雅治)の父・誠(要潤)と共に暴力団を使い地上げを行い、清二がその罪をもみ消していた過去がある。皆実と心太朗(大泉洋)が真実に迫り、清二は41年前の真相を語ったが、それは真っ赤な嘘だった。

 翌日、清二は蒲田の病床に訪れ「約束を守った」と声をかけ毒殺しようとするも、皆実と心太朗、そして京吾も駆け付け止められる。そして皆実は事件の真相を語り始める。

 まず取り寄せた戸籍謄本から、皆実と心太朗の母親が両方とも勢津子(相武紗季)と記されていることから、兄弟なのが確定。

 心太朗の実の父である鎌田(津田健次郎)と皆実の母・勢津子は赤坂の料亭の同僚で交際をしていたが、誠が勢津子を見初める。そして女将が縁談を勧め、勢津子の将来のために鎌田は身を引く。勢津子は嫁ぐも誠には本妻がいて、勢津子は愛人という状況。皆実を産み育てていたが、本妻に押しかけられ、大衆食堂を営んでいた鎌田のところに逃げてきた。やがて鎌田と勢津子の間に心太朗が産まれ4人で暮らしていたが、本妻と別れた誠が勢津子を連れ戻しに来る。一旦は拒否するが、地上げ作戦で嫌がらせを受け、また持病を持つ勢津子の体のことも考えて誠の元へ行かせる。ただ、心太朗は自分の子供ではないと拒まれ、鎌田が育てることになった。

 ある日、誠は皆実が自分の子供ではなく愛人になる前に身籠った鎌田の子供だと気づいた誠はキレて勢津子と皆実を殺害し、鎌田に罪を擦り付けようとした。鎌田を呼んで鈍器で殴り、勢津子の腹を刺す。しかし鎌田は、皆実を守ろうと誠と揉み合い、3人が階段から転落して鎌田と皆実が気絶。そこに清二が駆けつける。誠は罪の隠蔽を依頼するが拒否されたため、これまでの揉み消しをバラすと脅す。そこで皆実に意識が戻ったことで誠は刺そうとしたため、清二が灰皿で誠の後頭部を殴打。清二は鎌田と皆実を連れ出し、自身のアリバイを消す為に放火した。

 皆実は失明し、誠の両親に預けられることになる。清二は「素直に(犯人だと)認めれば黙っている」と鎌田に持ちかけ、そして心太朗を育てることも話し、鎌田は約束を交わして罪を被ることになった。これが41年前の事件の真相だ。

 鎌田が真実を喋らなかった理由は子供のためなのは当然だ。しかし勢津子の幸せを願って身を引くという、自分の事より相手思いの優しい性格という前提がある。子供の幸せのために罪を被り黙秘してきたというのに説得力があり、危篤状態の鎌田が心太朗を見て「心太朗、腹へってないか」という一言には、どれだけ心太朗のことを心配して生きてきたのかが伺える。

 41年間刑務所で黙秘してきた鎌田の壮絶な人生を思うと計り知れない苦しさだが、心太朗もこれまで父を疑う重い十字架を背負い、そして清二のような正義の人になろうと生きてきたのに最後に裏切られる辛さ。皆実に至っては、父親だと思っていた人が父親ではなく、しかも母親を殺害したという事実は、知らない方が良かったかもしれない重い事実だ。ただ、皆実は鎌田に「安心してください。私たちは幸せでした。あなたのおかげで、みんなに愛されて、生きてきました」と声をかける。2人が大事に育てられ、立派に成長し、最後に3人が再会できたことは、鎌田の選択は間違いではなかったとも言える。

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