『らんまん』万太郎の“爛漫”さは改善されるのか 受け止めてほしい、りんからの言葉

 万太郎(神木隆之介)の孤独感は増すばかり。『らんまん』(NHK総合)第37話では、徳永助教授(田中哲司)をはじめとする教室の面々から万太郎が無視されるようになってしまう。

 最初は学歴が小学生止まりだった万太郎がこれだけのことを知っていたり、できたりすることに感心をしていた教室の生徒たちだが、自分たちが経験してきた(そして現在も強いられている)努力を彼が一切せずに自由に動いている姿に、だんだん我慢ならなくなってきた。正直、爛漫な万太郎が落ち込む姿こそ悲しくて見たくないものの、教室組が彼を「よそ者」扱いする気持ちもわからなくもない。

 非正規ルートで、おいしいところどり。本当に学びたい植物学のほかに、さまざまな勉強もしなければいけないし、論文も書かなければいけない。そもそも東大の敷居を跨ぐために弛まぬ努力をし、試験に合格する必要があったわけだ。彼らにとって、多くの時間を費やしたことが無駄に感じられるような存在がやってきて、教授に気に入られ縦横無尽に教室に出入りするのを見せつけられれば、やはり良い気持ちはしない。アンフェアだから。万太郎の寂しさも理解できるが、教室組の言い分も理解できるため、そのどうしようもなさがなかなか辛い展開である。

 しかし、万太郎が彼ら側の気持ちを汲み取ることは必要だった。元気を出すために長屋の支配人りん(安藤玉恵)をレストランに招いて食事をする。しかし、「小学校も出てないのに大学に通うなんてね、愉快だね。ほら話みたいでさ」と気にしていたところを直球で言われてしまい、万太郎の表情は曇った。ところが他人の感覚からすれば、りんの意見も普通なのだ。考えてみれば、私たち視聴者はこれまでの視聴で“主人公”である万太郎にとっての当たり前や彼の感覚、価値観を竹雄(志尊淳)のように見守ってきた。だから彼の言動に慣れているし、万太郎が攻撃されれば「かわいそう」と思うわけだが、全く違う出所の人たちと万太郎の会話を通して、彼も彼で自分と違う相手を理解したり、気を遣ったり、寄り添う思いやりがもう少し必要があることがわかってきた。

 現に、初めての洋食に戸惑うりんはステーキをナイフとフォークで切って食べることに苦戦する。しかし、彼女が難しそうにしているのを分かりながら、万太郎は自分だけナイフとフォークを器用に使って肉を食べ続けた。りんが箸を頼み、また頑張って肉を食べようとするのを笑う。この一連はある意味で正規ルート(ナイフとフォーク)ではなく、自己流(箸)でいくことも悪くはないものだと表し、万太郎の励みとなるシーンにも見える。

 しかし、それと同時に万太郎が、自分ではわかっていることを分からない他者に(相手がわからないことを分かりながらも)教えてあげることができないーー、自分と違う相手を理解し、気遣う思いやりが嫌味なく欠如していることも表している。本当なら節約をしなければいけないのに、竹様が黄色い声を浴びながら働いている様子もいじりつつ、「こうやって竹雄が働いてくれますき、もりもり食べましょう!」と言ってしまうのも少し竹雄にとって配慮が欠けている(とはいえ、竹雄本人はもう慣れてしまっているのだが)。こういった素の気付けなさのようなものが、今後も教室の生徒や先生らとのコミュニケーションに影響を与えそうで怖いのだ。

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