『波よ聞いてくれ』に溢れるラジオ業界へのリスペクト カオスな展開で光った瑞穂の言葉
「放送事業としてラジオがテレビに優っているものが4つだけある。何かわかるか?」
地域密着性、災害への対応力、反応の速さ。そして、4つめに挙げられたものには本作のラジオ業界に対するリスペクトが溢れていた。
憧れの放送作家・久連木(小市慢太郎)の引退匂わせ発言に落ち込むADの瑞穂(原菜乃華)。『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)第4話では、そんな彼女の成長を促す大事件が勃発する。
ある日、本業は官能小説家の久連木が出版社の穂隠(片山萌美)という女性を連れ、ミナレ(小芝風花)が働くスープカレー屋にやってきた。全身から色気を漂わせる穂隠がやたら久連木にボディータッチをかます中、店に現れた瑞穂がその現場を目撃。久連木に憧れ以上の感情を抱いている彼女はショックで店を飛び出してしまう。その日から久連木はラジオ局にパッタリと姿を現さなくなってしまった。まどか(平野綾)の番組からは外れ、ミナレの番組「波よ聞いてくれ」の台本を担当するとだけ告げ……。
今後は小説の仕事に専念する久連木から、新人パーソナリティであるミナレへの餞なんじゃないか。そう予測する麻藤(北村一輝)だったが、実のところ久連木はとんでもないことに巻き込まれていた。放送関係者を次々と拉致しては、自分たちのやりたい企画を番組でやらせる元キー局のテレビプロデューサー・花輪(飯田基祐)率いる団体に監禁されていたのである。
その目的はテレビ・ラジオの復権。本当に面白いコンテンツを届けるためならヤラセも厭わず、会社を追われた花輪はインターネットや素人による動画配信の勢いに押され、斜陽産業とまで言われる放送業界の怠慢を嘆いていた。そんな放送業界に電波ジャックを通じていわば革命を起こさんとする彼らに「プロとしての矜持も忘れ、当たり障りのない番組作りしかしていない」と日々番組づくりに携わる自分たちにとっては耳が痛くなるような台詞を吐かせながら、本作がカットバックで映し出すのは久連木という存在の重みを噛みしめるMRSの面々だ。
その才能を高く買い、自分がラジオの世界に引き入れた久連木を“戦友”と称する麻藤。久連木とは仕事で長い付き合いのあるまどかは、彼を自分の番組の専属作家として私物化することでその居場所を守り続けていた。そうしなければ、聴取率とともに主な収入源である広告費が低迷。経費削減に伴い、真っ先に構成作家である久連木が切られるからだ。
そんな厳しい世界に彼らが身を置く理由は何より、ラジオを愛し、ラジオの可能性を信じているから。久連木もそう。瑞穂が高校生の頃、ワークショップの講師として学校を訪れた久連木は彼女にラジオの最たる魅力を語った。それが冒頭で述べた、ラジオがテレビに優っている4つめの点である。