『どうする家康』松本潤が見せる“覚悟”を決めた家康の姿 絶体絶命の「どうする?」回に

「この乱世……弱さは害悪じゃ」

 「弱き主君は害悪、滅ぶが民のため」。信玄が家康の義弟・源三郎(長尾謙杜)を通じて家康に伝えた言葉だ。いまの家康にはこの言葉を否定することができなかった。家康は瀬名に木片を削って作った兎を手渡し、「これはわしの弱い心じゃ。ここへ置いてゆく」と言う。家康の弱いけれども優しい心は決して欠点ではない。しかし乱世で生き延びるためには、大切な人、民、国を守るためには、優しさではなく、戦に臨む強さが必要だ。瀬名や息子・松平信康(細田佳央太)のいる三河・岡崎には指一本触れさせないと誓った家康は、瀬名にこう言い残した。

「瀬名。そなたは何があっても強く生きよ」

 瀬名や信康がいる三河・岡崎を守るため、家康は武田軍を追い、後ろから追い落とす決断を下すも、三方ヶ原台地では武田軍が待ち構えていた。戦の経験に長けた信玄がほくそ笑む。信玄は家康を「大将はひ弱で臆病。されど……己の弱さを知る、賢い若造じゃ」と評していた。信玄は家康の賢さには一目置いていたようだが、信玄にとっては所詮経験の浅い若造であることに変わりはない。信玄が勝頼(眞栄田郷敦)に見せた兵法が、「戦の勝ち負けは多勢無勢で決まるものではない! 天が決めるんじゃ!」と意気込んでいた家康の心を打ち砕く。

「勝者はまず勝ちて、しかる後に戦いを求め、敗者はまず戦いて、しかる後に勝ちを求む」

 信玄が源三郎に言伝を託していたときから、すでに戦は始まっていたのだろう。自身の弱さを知る賢い大将がどう立ち回るかを見抜いていた信玄は泰然とした面持ちを見せる。一方で、信玄の術中にはまった家康は戸惑いを隠しきれない。

 信玄の余裕と家康の困惑を見ていると、絶体絶命に追い込まれた徳川軍の一人になったような気分になる。信長に励まされ、瀬名との対話で守るための強さを得た家康も、信玄を前になす術がなかった。物語は虎松(板垣李光人)が金蛇美具足をまとった遺体と、金の兜をかぶった首がぶら下がるのを目撃する場面で幕を閉じた。もちろん史実を知っている視聴者は家康の死の真相をわかっていると思うが、第18回「真・三方ヶ原合戦」で何が明かされるのか楽しみだ。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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