不思議な一期一会だ。『日曜の夜ぐらいは...』（ABCテレビ・テレビ朝日系）第1話では、ままならない日常を過ごす住まいも職業もおそらく年齢も異なる3人の女性が運命的な出会いを果たす。彼女らが出会ったのは、とあるラジオ番組主催のバスツアー。公団住宅に車イスの母・邦子（和久井映見）と2人で暮らし、生活を支えるためにファミレスのバイトを休みなく続ける岸田サチ（清野菜名）は、母親の代理として無理矢理このツアーに送り込まれる。

　そこで出会ったのが、祖母と田舎に暮らし、ちくわぶ工場で働く樋口若葉（生見愛瑠）に、元ヤンで何だか空回りしがちなタクシー運転手の野田翔子（岸井ゆきの）。それぞれに日常生活で話し相手がおらず、“会話の回路が壊れてしまっている誤作動”状態の2人に囲まれ、サチも半ば諦めるような形で彼女らに巻き込まれていく。固く心を閉ざしていたサチにどんどんどんどん血が通っていくさまに、「たまには私から離れて思いっきり笑ったり笑ったり笑ったりしてらっしゃい」と言った邦子の顔が浮かぶようだった。

　事あるごとに「ごめんね」を繰り返す母親の言葉に見向きもせずにバイト先に向かい、そこでも一人黙々と与えられた仕事をこなす。バイト先でも特に親しい人はいないようで、常に心にバリアを張っているサチ。全身から“誰にも立ち入られたくないし、誰にも分かられたくない”というオーラがビンビンに出ている。

　半径何キロ以内という範囲で自身の生活が完結しているサチにとって、久々にその枠外に放り出されることになったバスツアー。ツアー期間中のラジオネームのような呼び名を与えられ、最初は渋っていたサチも、この非日常空間でたまたま接点を持った2人の勢いに気圧され、居心地の良さを覚えていく。母親の邦子もラジオに投稿する楽しみを「自分に似てるけど違うキャラクターになれる」ことだと話していたが、まさにサチも誰も自分のことを知らない場所で、誰一人元々の知り合いがいない中だからこそ、皮肉なことに本来の自分自身を取り戻せたのかもしれない。

　自分が笑っている写真を驚いたように見るサチの目からは涙が溢れる。

「ダメなんだけどな、こういうの。楽しいことあると、きついから。きついの耐えられなくなるから。きついだけの方が楽なんだよ。何も考えなければ良いんだし。一緒にいて楽しい友達とかできるときついんだよ」