現在放送中のドラマ『合理的にあり得ない～探偵・上水流涼子の解明～』（カンテレ・フジテレビ系／以下『合理的にあり得ない』）を通して、松下洸平がヒロインを魅力的に見せることに長けている俳優であることを再確認した。

　それをいちばん最初に感じたのは、『#リモラブ ～普通の恋は邪道～』（日本テレビ系／以下『#リモラブ』）で、ヒロイン・美々（波瑠）が恋に落ちる“アオちゃん”こと青林を演じていた時のこと。松下本人が持つ優しさが、役柄にも影響しているのだろうか。話を聞きながら、「うんうん」と頷く時の優しい視線、自信がないながらも全力でヒロインに向き合うまっすぐなところ。“こんな人に愛されたいな”と思うのとともに、“こんな人に愛される女性（＝ヒロイン）ってすごく魅力的なのだろうな”と視聴者に感じさせるのが、松下洸平マジックなのだ。

　その後、2021年にヒットした『最愛』（TBS系）でも、ヒロイン・梨央（吉高由里子）の初恋の人・大輝を演じた松下。この時の役柄も本当に魅力的で、筆者のまわりでも松下の沼に落ちる人が続出していた。ただ、自分だけが輝くのではなく、助演の時はあくまでヒロインを輝かせるのが、松下のスタイル。『最愛』でも、一歩引いたところから梨央を見守り、一心に思いやるキャラクターが見事にハマっていた。

　このように松下は、真剣に恋をしている表情がとてもよく似合うのだが、『知ってるワイフ』（フジテレビ系）の津山のような“モテる男”的な役柄でも魅力を発揮するのだからすごい。同作は、『#リモラブ』最終回からおよそ2週間後にスタートした。“アオちゃん”の沼にハマっていた筆者は、まったく別人と化している松下を見て、思わずキャストの名前を確認したことを思い出す。話し方からプリントの渡し方まで、何もかもがちがう。「もしかして別人？」と勘違いしてしまうほどの変わりっぷりだったのだ。

　キャスト名を確認したといえば、『MIU404』（TBS系）の第2話で、逃走中の殺人犯・加賀美を演じていた時もそうだった。松下ファンの友人から、「ゲストで出るから観てね！」と言われたのにもかかわらず、「あれ？　この殺人犯が『スカーレット』（NHK総合）のハチさん!?」とテレビの画面を食い入るように見てしまった。

　松下の凄みは、役柄によって、“善”にも“悪”にも振れること。『MIU404』で演じた加賀美は、いわゆる善良な部分も持っている罪人だったのだが、いつか思い切り“悪”に振り切った役柄も見てみたい。キャラクターによってすべての行動を変えてしまうほどの憑依力を持つ松下を見ていると、“やってほしいキャラクター”がどんどん浮かび上がってきて、ワクワクする。