『あなたがしてくれなくても』インタビュー
岩田剛典、人間にしかできない表現を続けていくために “失敗”の先にある気づき
第1話の放送後から大きな反響が寄せられているフジテレビ系木曜劇場『あなたがしてくれなくても』。セックスレスの2組の夫婦の姿をとおして、多くの感想がSNSでも飛び交った。
ハルノ晴の原作コミックのイメージそのままに、繊細な表現で主要キャラクターを演じた役者陣にも称賛の声が相次いだ。そんな中心人物のひとり、新名誠を演じたのは岩田剛典。献身的に妻・楓（田中みな実）を支えるものの、やりきれない思いを抱え、少しずつ心がすれ違っていく姿を丁寧に演じている。新名の役作り、信頼する演出チームとの絆、本作に込められたメッセージなど話を聞いた。【インタビューの最後にはチェキプレゼントあり】
絶大な信頼を寄せる西谷弘監督の演出
――最初にお聞きしたいのが『あなたがしてくれなくても』というタイトルについて。率直にどんなイメージをもちましたか？
岩田剛典（以下、岩田）：いろいろな“してくれなくても”を想像してしまうようなタイトルだと思います。タイトルだけでも、興味をそそられますよね。
――原作コミックは撮影前に読まれたそうですが、どんな感想を抱きましたか？
岩田：非常に楽しく読ませていただきました。原作はまだ連載が続いていますが、現時点でいただいている台本までで、かなり近いところまで来ていて。なので、「一体どんな結末になるんだろう？」と僕自身も実はまだわからないんです。視聴者の皆さんにも回を重ねるごとに結末を想像してもらえたらと思いますし、出演者の僕たちも物語の行方を楽しみながら現場に臨んでいます。
ーーフジテレビ木曜劇場は「大人のドラマ」がこれまでも数多く誕生してきました。本作も歴代の作品に名を連ねる名作になる予感です。
岩田：単純な「ラブストーリー」とは言い切れない大人の恋愛ドラマが多いですよね。実はこの枠への出演は、2014年放送の『ディア・シスター』以来で。約8年ぶりということで、成長した姿を視聴者の皆様に届けることができればと思っています。これまでもさまざまな恋愛を描いた作品に参加させていただきましたが、本作はその中でも本当に難しい心理描写が必要とされる作品だと感じています。視聴者の皆さんにとっても共感していただけるようなリアルな心模様が描かれているので、こんな物語をTVドラマでお届けできることがすごいなと。そのチャレンジ精神に惹かれましたし、『シャーロック』（フジテレビ系）シリーズの西谷（弘）さんが監督なので、今回もぜひ参加できればと思いました。
――岩田さんが感じる西谷演出の魅力はどんなところでしょうか？
岩田：西谷監督は僕が用意してきたものをはるかに上回る演出をつけてくださるんです。それでいて、自分がやりにくくなるということはまったくなくて、視聴者目線で、なぜこのキャラクターがその行動を取るのかというものを明確にしてくださいます。いつも想像を超える提案をしてくださるので、演じていても楽しいですし、すごく信頼しています。
――好き／嫌いなど0か100ではない感情が多い作品だと思うので、心理表現が非常に難しい作品だと感じます。
岩田：そうなんです。ものすごくさじ加減が難しい。自分が正解を出せているのか、どうなのか、果たして……とずっと思いながら演じています。毎日ちょっとずつ自信をなくしているような感じもあって（苦笑）。例えば、「大丈夫」という言葉があったとしても、「大丈夫」という意味じゃなくて、「大丈夫じゃない」という意味の「大丈夫」だったりもあるじゃないですか。それを表情や声でどうやって伝えるべきなのか。あとは喋っていないシーンも重要で、何気ない視線や佇まいをどうするべきか常に悩んでいます。
――岩田さんが演じる新名は、原作コミックのイメージにもぴったりでした。岩田さんは彼をどのような人物と捉えていますか？
岩田：新名は“優等生”としてずっと生きてきた人物だと捉えています。脚本を読んだとき、原作よりも仕事ができる人物というか、より知性があるような印象を抱きました。それは、職種も変更されているみち（奈緒）の夫・陽一（永山瑛太）との対比をより描くためなのかなと。仕事は順調、素敵な奥さんもいて、傍から見れば幸せそのもの、だからこそ……というキャラクターですよね。新名を演じるために、特別な役作りを意識していなかったのですが、西谷監督からは「体を鍛えてほしい」と言われたんです。これは決して肉体美を見せるため、というものではなくて、新名が「ちゃんとしている人」として重要な要素だと。実は劇中で着ているスーツはすべてオーダーメイドで、僕の体にフィットするように完璧なサイジングになっているんです。新名の肉体への意識、服をとおして、彼の完璧主義な部分を垣間見てもらえたらと思います。