『どうする家康』松本潤の涙に表現された家康の後悔 ラストには“別人”のような本多正信も

 『どうする家康』(NHK総合)第8回「三河一揆でどうする!」。三河一向宗の一大拠点である本證寺から年貢を取り立てようとする家康(松本潤)に対し、一向宗徒が三河各地で一揆を起こした。家康の独断が招いた事態だが、こうなってしまえば武力で抑え込むしかない。

 そんな中、なぜか家康が名前をいつも間違えてしまう夏目広次(甲本雅裕)が、一向宗徒である自分の家来たちに矢を射かけることは気が進まないと口にする。そのうちに三河国内が内戦状態に陥り、城下では家臣たちが離反を呼びかける密書を受け取る。家康の耳に届いたのは夏目広次の裏切りだった。

 物語冒頭、家康は「我が家来に寺の側につく者などあるはずがなかろう」とたかをくくっていた。はなから家康の判断に眉をひそめていた瀬名(有村架純)に、家康はやや子供っぽく、意地を張って反論する。家康は家臣団が皆、自分に付き従うと信じてやまない。だが、門徒兵たちに襲われたこと、今川義元(野村萬斎)の問いかけ、そして土屋長吉重治(田村健太郎)の死をきっかけに、家康は自身が本当に守るべきものは何かを知る。

 手勢を率いて寺内町に入った家康は銃で撃たれてしまう。鎧が弾丸を受け止めたが、家康の意識は朦朧としている。夢うつつの中で家康が思い出していたのは、家康が父のように心から尊敬していた義元からの問いだ。義元は「この国の主は誰ぞ」と問いかける。家康の答えに「否〜!」と声をあげる義元ののびやかさ、気品のある風格が印象に残る。太守様、京の将軍様、天子様、どの答えでもなく戸惑う家康の姿は、三河の平定に不安や焦りを抱える今の家康と重なる。記憶の中の義元が指差した先に見えたのは民の姿だ。義元はおだやかな佇まいのまま、家康の顔をじっと見据えて核心をつく。

「我らは民に生かしてもらっておるのじゃ」
「民に見放された時こそ、我らは死ぬのじゃ」

 意識を取り戻した家康の目に一筋の涙が流れた。横たわる家康の目の前には、一揆で命を落とした民の姿があった。門徒たちは死をも恐れず、戦いに臨んでいる。けれど本当ならば、彼らは皆、平穏な日常を過ごしていたはずだ。義元からの言葉を思い出した今、門徒兵たちが鬼気迫る表情で家康に槍を振り下ろし、家康は死を覚悟する。

 槍が振り下ろされる直前、長吉が身を挺して家康をかばった。家康らを罠にはめた長吉だったが、彼は家康の命を救った。岡崎城で目覚めた家康は手当を受けていた長吉のもとへと駆け寄る。懸命に謝る長吉に、家康は泣きそうな顔で「もうよい! そなたはわしを助けてくれたんじゃ」と訴える。熱心な一向宗徒だった長吉は、仏と殿の間で苦しんでいたのだ。

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