生きづらさを抱える人に届いてほしい『リエゾン』 凸凹に寄り添う山崎育三郎の眼差し

 「気づいているのに気づかないふりをしている。そんな大人が多すぎます」とは、“ヤングケアラー”と呼ばれる家事や家族の世話、介護などを日常的に行っている18歳未満の子どもの支援に携わった臨床心理士の向山(栗山千明)に佐山が放った言葉だ。十分な支援が行き届かず、脳梗塞で右半身に麻痺が残ってしまった母親の面倒をほぼ一人で請け負う子どもの状況に向山だけが積極的に介入した。それは向山自身が元ヤングケアラーだから。自分の抱える生きづらさは、時に今にも溺れそうな誰かを助ける船となる。この物語はその事実を私たちに提示し、「大丈夫、あなたはいい子だよ」と言ってくれているみたいだ。

 ちなみにタイトルの“リエゾン”は、フランス語で「連携」「つなぐ」を意味する言葉。精神疾患や発達障害を抱える当事者とその家族、また医療者はどうしても共依存に陥りやすい。支える人の「助けてあげたい」「何かしてあげたい」という気持ちが強ければ強いほど、その関係は外部から切り離されてしまいがちだ。

 しかし、「さやま・こどもクリニック」にも佐山と志保だけではなく、向山と受付の渚(是永瞳)がいて、他にも言語聴覚士の堀(志田未来)や訪問看護師の川島(戸塚純貴)をはじめ、さまざまな人が連携を取りながら日々患者と向き合っているように、大事なのはより多くの人で当事者をサポートすること。全ての人に理解してもらうのは難しいかもしれない。だけど、志保の寝坊・遅刻・忘れ物がどうしたら改善するかを、佐山と向山が本人と一緒になって考えているのを見て、こういう人が世の中に少しでも増えたらいいなと思った。そうしたら、いま多くの人が抱える生きづらさは軽減するだろう。本作をきっかけに、一人ひとりの視界が少しでも広がったらと願う。

■放送情報
『リエゾン―こどものこころ診療所―』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15放送
出演:山崎育三郎、松本穂香、栗山千明、志田未来、戸塚純貴、是永瞳、風吹ジュン
原作:ヨンチャン(原作・漫画)・竹村優作(原作)『リエゾンーこどものこころ診療所-』(講談社『モーニング』連載)
脚本:吉田紀子
演出:Yuki Saito、小松隆志、竹園元(テレビ朝日)
チーフプロデューサー:五十嵐文郎(テレビ朝日)
プロデューサー:浜田壮瑛(テレビ朝日)、木曽貴美子(MMJ)、村山太郎(MMJ)
協力プロデューサー:中込卓也(テレビ朝日)
制作:テレビ朝日、MMJ
©︎テレビ朝日

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