『女神の教室』南沙良と前田旺志郎が起こした化学反応 “正反対”がもたらす絶妙なバランス
劇中の柊木(北川景子)の考えを拝借すれば、個人の内面、すなわち心のなかで思うことは自由であり、国家権力はそれを侵してはならないという“黙秘権”の存在理由と、藍井(山田裕貴)が柊木に対して言う「学生のプライバシーにまで首を突っ込むべきではない」というロースクールの教員としてのあり方が重ねられる。さらに天野(河村花)と水沢(前田拳太郎)の関係が気になって仕方がない桐矢(前田旺志郎)が、水沢にそれを問いかけながら内面の自由を尊重しようとし、水沢は黙秘権を行使する。学んだ内容がそのまま“言語”として日常に溶け込んでいくという点は、法学部出身の筆者からするとどこか懐かしさを覚えてしまう。
1月23日に放送された『女神の教室〜リーガル青春白書〜』(フジテレビ系)第3話の“実務演習”でテーマとして掲げられるのは、憲法第38条1項「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」と、刑事訴訟法第198条2項、それから刑事訴訟法第311条1項でも規定されている“黙秘権”だ。前回のエピソードでは授業を通して柊木から一方的に説く様子が見受けられたが、今回は“ディベート”によって学生たちが主体的に学ぶ姿にフォーカスが置かれる。当然それと同時に、学生たち5人の関係の変化が見られるのだから興味深い。
森で6歳の男児Aの遺体が発見され、事件の前に近隣の住宅街でAと歩いていた男Xが目撃されるのだが、事情を聞かれたXは黙秘権を貫き、事件は迷宮入りとなる。この事案をもとに黙秘権は必要か否か、否定派と肯定派に分かれてディベートをすることに。くじで否定派に回った桐矢と照井(南沙良)は勝利を掴むのだが、次回の授業で立場を変えて再度ディベートするという柊木の提案に、照井は「加害者を擁護したくない」と反発する。一方、柊木の同期の横溝(宮野真守)が検察官であると知った検察官志望の桐矢は裁判の見学をお願いする。それに対して柊木は、同じく検察官志望である照井を誘うよう提案するのだ。
今回のエピソードは“照井回”であり“桐矢回”でもある。極めて強い処罰感情を持ち合わせている照井の過去については含みを持たせたままに留めておきつつも、これまで実務演習クラスの5人のなかでも完全に浮いてしまっていた、あるいは柊木に食ってかかる立場だった照井が、最も柊木に感化されている桐矢とコミュニケーションを重ねることによってわずかながらに心を開いていく様子が見受けられる。