『女神の教室』北川景子と山田裕貴が用いる教育方法の違いとは? 元学生が語る法科大学院

 むしろ悩ましいのは雫の方だろう。派遣教員は裁判所や検察から選ばれて来ただけあって、人間的にも法律家としての実力も申し分なく頭脳明晰な人が多い印象がある。雫はというと、第2話終了時点で際立った頭の良さを感じさせる描写は少ない。それよりも少数者の側に立つ視点や、事実とされる事象を疑ってみる重要さを強調する場面が多いように思われる。

 制限時間内に法律を用いて問題を手際よく処理することが重視される司法試験で、事案を深掘りする雫の教育方法は一見、非合理的に見えるが、実はこれも法的思考の大事な要素だったりする。第1話の模擬裁判で「疑わしきは罰せず」の原則によって検察側の立証を覆した法廷戦術は、事案を通して人を見るスタンスが現れたものだ。こうした視点は雫が裁判官として事件に取り組む中で培われたに違いなく、ロースクールで実務家教員が教える利点でもある。司法試験は実際の事件に題材を求めた設問も多く、本質的に答えがない問題といえる。その点から言うと、雫の授業は法律の奥深さを教えてくれる良い授業だ。ただし試験合格の最短経路を示すわけではなく、学生にとって若干扱いに困る内容であることは否めない。

 ロースクールの教育はハードだ。専門家養成の看板は裏を返せば適性のない人間を振るいにかけるプロセスであり、高い留年、休学、退学率からもわかるように、進級をかけて熾烈なサバイバルが繰り広げられる。劇中に「ロースクールに通ってて悩みゼロのやつなんていない」というセリフも登場するが、寸暇を惜しんで勉学に打ち込む学生役の高橋文哉や南沙良らを見るたびに、単位を取得するため必死になっていた日々がフラッシュバックする。法科大学院を舞台にした『女神の教室』は、答えのない問いに人間的な光を当てる試みと言えるのではないだろうか。

■放送情報
『女神の教室~リーガル青春白書~』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:北川景子、山田裕貴、南沙良、高橋文哉、前田旺志郎、前田拳太郎、河村花、佐藤仁美、宮野真守、小堺一機、尾上松也、及川光博
脚本:大北はるか、神田優
プロデュース:野田悠介
演出:澤田鎌作、谷村政樹
音楽:武部聡志
主題歌:Vaundy「まぶた」(SDR)
法律監修:水野智幸(法政大学大学院法務研究科)
制作・著作:フジテレビジョン
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