窮地にあって陣頭指揮を執りながら社員を鼓舞し、一人ひとりを見守る浩太は社長の器を備えているに違いない。ただ、悠人（横山裕）が言うように、浩太には経営者として必要な冷徹さが欠けているかもしれない。社員を守ろうとする経営者にとって、リストラも自主的な退職もどちらも身を切るように辛いことだ。冷静に考えると、結城が辞めることは人件費を抑制する結果、IWAKURAを救う可能性もある。社長の浩太は当然そのことを理解しているが、それをおくびにも出さず「お前がいてへんようになったら寂しいわ」と本音で語る浩太は、部下がついていきたくなるリーダーだと感じた。

　リーマンショックに象徴される経済原理が弱肉強食なら、社員の離職を打算的に描かない『舞いあがれ！』は、互いに守り合うことで苦境を脱する中小企業の姿を描こうとしている。間近で見ている舞にとっては、自分の進路を見つめ直す機会になるだろう。柏木（目黒蓮）との会話でパイロットになる現実に引き戻された舞が、どんな一歩を踏み出すか見守りたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ！』
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
出演：福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作：桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽：富貴晴美
主題歌：back number 「アイラブユー」
制作統括：熊野律時、管原浩
プロデューサー：上杉忠嗣
演出：田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地：東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供＝NHK