『舞いあがれ!』の後半戦はどこまで“時代”を描くか リーダー論がテーマのひとつに
2022年暮れ、“朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の前半戦が終了した。
朝ドラの年度後期の作品は年末年始の休みをはさむため前半後半のメリハリがつけやすいと感じる。前半の最終週となった第13週「向かい風の中で」はサブタイトルも、ドラマのテーマである「向かい風を受けてこそ空高く飛べる」が使用され、主人公・岩倉舞(福原遥)に人生、最大の向かい風が吹き始める。それは、リーマンショックである。2008年起こった世界的な金融危機によって日本人は貧しくなった。舞の父・浩太(高橋克典)が経営する東大阪の町工場の経営も傾き始め、浩太は胃潰瘍になるほど心身共に打撃を受けた。就職が1年延期になった舞は工場を手伝うことにする。
舞と浩太はウマが合い、子供の頃からふたりは夢や人生観を語り合ってきた。飛行機好きだった浩太の影響を舞は受けて、いつか舞の乗る飛行機の部品を浩太が作ることがふたりの夢になる(最初は舞が飛行機を作りその部品を浩太が作る夢だったが途中で舞が進路を変更した)。
同性の親子よりも異性の親子のほうがぶつからないともいうが、どこか蚊帳の外の母・めぐみ(永作博美)がすこし不憫な気もすることはさておき、工場の梱包作業をはじめた舞がなかなか見つけられない不良品を見つけたとき、浩太は「舞は不良品探してる時でもええとこ見つけるんやな」と褒める。不良品の存在によってそれ以外のたくさんの良品がいかにすばらしいかに舞は目を向けたのだ。
部品に限らず、舞は、休憩中・若い女性社員・山田紗江(大浦千佳)から意地悪を言われても、わりとスルーして、その後、ほかの社員たちの誠実さやあたたかさに触れる舞。山田を不良品と考えるとしたらちょっと引っかかりもあるが(そういう意図かどうかが定かではない)、意地悪にくよくよする描写を入れないところがいい。
パイロットも会社の社長も「アンカー」だと考える舞と浩太。アンカーの役割はそこまで頑張ってきた人たちの努力と想いをすべて引き受けてゴールに向かうことである。舞は子供の頃からずっと「みんなの夢を背負う」ことを自分の使命と考えてきた。「向かい風を受けて飛ぶ」というポジティブ思考のほかに、『舞いあがれ!』にはリーダー論がテーマになっているように感じる。浩太や舞のようにアンカーとしての役割を自覚しているひとが現代社会にいるかという問いと、誰もが「アンカー」の意識をもつことの重要性が物語から強く発せられているように見える。