『エルピス』が描く男性同士の連帯 “トキシックマスキュリニティ”を脱する手がかりに
メディアや報道のあるべき姿とはなんなのかを描き、放送開始から注目の的となり続けているドラマ『エルピスー希望、あるいは災いー』(カンテレ・フジテレビ系)が12月26日に最終回を迎える。正しさを求めることや権力に立ち向かうことの必要性、そしてその難しさや危うさなどを描き続けて来た本作。
主人公は浅川恵那(長澤まさみ)という女性アナウンサーだが、第7話以降は浅川が報道番組のキャスターへ返り咲いたため、眞栄田郷敦演じる岸本拓朗を中心に話が展開している。もともと男性キャラクターの方が多く登場していた本作だが、岸本が中心になったことで男性同士の関わり方にグラデーションが生まれた。今回はその中で描かれた男性同士の連帯に焦点を当ててみたい。
長澤まさみ、『エルピス』恵那役の一番の支えは眞栄田郷敦 「助けられてばかりでした」
『エルピスー希望、あるいは災いー』(カンテレ・フジテレビ系)の最終話が12月26日22時より放送されるのを前に、主演の長澤まさみ…
浅川と岸本が当初から真実を追い求め奔走していた「冤罪疑惑事件」は、作中でも言及があった通り、権力を敵に回し立ち向かって行くことと繋がっている。それはすなわち、権力を持った男性たちが回す男性優位な社会と向き合って行くことでもあるのだ。昨今では男社会において不平等な扱いを受ける女性たちが中心となったフェミニズム運動や、女性同士の連帯であるシスターフッドなどが注目を集め、エンタメでも題材の1つとして取り上げられることが多くなった。一方で、男性優位な社会において男性たちに渦巻くトキシックマスキュリニティ(有害な男らしさ)や、それに基づいたホモソーシャルが男社会をより有利に働かせ、そこから外れた男性が生き辛さを感じていることはあまり注目されていない。
本作では、岸本を中心にストーリーが展開するようになってから、男性同士で連帯し男社会へ対抗しようとする姿が少しずつ描かれ始めている。特に第9話では副総理の娘婿であり秘書の大門亨(迫田孝也)が登場し、義父の大門(山路和弘)が過去に派閥議員のレイプ事件を揉み消したうえ、被害者が自殺した事実を告発しようと、岸本に協力する姿が描かれた。岸本と亨には、権力という長いものに巻かれ間違ったことと分かっていながら真実と向き合わなかった己の罪深さに後悔しているという共通点がある。だからこそ自身が抱える罪悪感と正義感の葛藤を互いに理解し、相手に弱さを見せて次へ繋げるための行動を起こそうとするのだ。