セザール賞7冠のバルザック原作映画『幻滅』2023年公開へ グザヴィエ・ドランも出演

 グザヴィエ・ジャノリ監督による新作映画『Illusions perdues(原題)』が、『幻滅』の邦題で2023年に日本公開されることが決定した。

 本作は、19世紀フランスを代表する文豪、オノレ・ド・バルザックが書き上げた『幻滅――メディア戦記』を、『偉大なるマルグリット』のジャノリ監督が映画化したもの。2021年の第47回セザール賞において、作品賞をはじめ、最優秀助演男優賞(ヴァンサン・ラコスト)、有望新人男優賞(バンジャマン・ヴォワザン)を含む最多7冠を受賞した。

 舞台は19世紀前半。恐怖政治の時代が終わり、フランスは宮廷貴族が復活し、自由と享楽的な生活を謳歌していた。文学を愛し、詩人として成功を夢見る田舎の純朴な青年リュシアン(バンジャマン・ヴォワザン)は、憧れのパリに、彼を熱烈に愛する貴族の人妻、ルイーズと駆け落ち同然に上京する。だが、世間知らずで無作法な彼は、社交界で笑い者にされる。生活のためになんとか手にした新聞記者の仕事において、恥も外聞もなく金のために魂を売る同僚たちに感化され、当初の目的を忘れ欲と虚飾と快楽にまみれた世界に身を投じていくが……。

 主人公のリュシアン役は、フランソワ・オゾンの『Summer of 85』に出演したバンジャマン・ヴォワザン。純粋な青年が野心と欲望に惑わされ堕落していく過程を演じた。

 また、リュシアンの先輩格として彼を教育していくジャーナリストを演じるのは、『アマンダと僕』のヴァンサン・ラコスト。さらに、私欲にまみれた人々のなかで唯一、誠実にリュシアンを見守る作家のナタン役で、監督としても活動するグザヴィエ・ドランが出演している。そのほか、セシルド・フランス、サロメ・ドゥヴェル、ジェラール・ドパルデュー、ジャンヌ・バリバー、そして本作が遺作となったジャン=フランソワ・ステヴナンらが共演に名を連ねた。

 バルザックが描いたのは、社会を俯瞰し、その中で翻弄されるさまざまな人間像。約200年の物語ながら、現代と酷似したメディアの状況を描いた社会派人間ドラマだ。バルザックが44歳で書き上げた『人間喜劇』の一編である本作を、ジャノリ監督は学生時代から映画化したいと強く望んできた。

 ジャノリ監督は、本作を手がけた理由について「わたしはとても肉体的な感覚や刺激を映画に持ち込みたかった。サロンの人々の動き、パリの異なるエリアの大衆の猥雑とした雰囲気、あるいは時代が移り変わっていくそのスピード、そういったダイナミックなムーブメントを生み出しながら、ここに登場する人々の人生、悲劇と喜劇を結びつけたいと思ったのです」とコメントしている。

■公開情報
『幻滅』
2023年公開
出演:バンジャマン・ヴォワザン、セシル・ド・フランス、ヴァンサン・ラコスト、グザヴィエ・ドラン
監督・脚本:グザヴィエ・ジャノリ
配給:ハーク
配給協力:FLICKK
2022年/フランス映画/フランス語/149分/カラー/5.1chデジタル/スコープサイズ/原題:Illusions perdues/字幕:手束紀子
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