平野紫耀に気持ちよく騙される 不死鳥のごとく新たに舞い降りた『クロサギ』の物語

物語とともに引き込まれる、平野紫耀の強い眼差し

 たしかにストーリーは面白い。だが、主演はどうだろう。ジャニーズの中でも、ひときわキラキラと眩しい正統派なアイドルグループとして愛されるKing & Princeの平野紫耀だ。ステージでは歌って踊って、ドラマでも王子様的なキャラクターを演じてきた。バラエティに出演すれば、今度は天然発言で笑いを誘うという圧倒的な“陽”の雰囲気を持つ。そんな平野が、シロサギに家族をめちゃくちゃにされたという暗い過去を持つクロサギはミスマッチではないかと。

 だが、そう思った人にこそ第1話をラストまでぜひ観てほしい。とはいえ、登場した瞬間は「やはり、“陽”すぎるのでは?」と感じるかもしれない。しかし、それもストーリーを見進めるうちに、視聴者を騙す下地だったのではと思えてくる。後半に向けてグイグイと平野の眼差しが強くなっていくのだ。特に詐欺界のフィクサー・桂木(三浦友和)に食い入るように見つめて問い詰めるシーンは、平野の目が徐々に大きくなっているような錯覚を起こすほどだ。

 そうした演出は、マンガやアニメでは見受けられるものの、生身の人が演じる実写版では不可能なこと。しかし、平野の大きな瞳で、真に迫る思いが乗ると、そのように見えてくるから不思議だ。マンガから抜け出したかのような見目麗しい王子様キャラを演じられるだけでなく、リアルな人間が演じるドラマをマンガのような緊迫感を持たせて魅せる。そんな力が俳優・平野紫耀の眼差しにはあるのかもしれない。

 また、そんな平野の演技を、脇を固めるキャストの重厚感がより一層光らせる。黒崎にとって最大の敵である大物詐欺師・御木本に坂東彌十郎、腐った大企業を標的とするシロサギ・白石に山本耕史、そしてヒロイン氷柱(黒島結菜)の父・吉川辰樹に船越英一郎と、甘味のメニューを根底から支えるあんこのように、ずっしりとして食べごたえ十分。加えて、黒崎を追う警部補・神志名を演じる井之脇海は、さながらあんみつに添えられたフルーツのようにフレッシュかつさわやかだ。

 何が正義で、何が悪なのか。決して綺麗事では語られない複雑な作品である『クロサギ』。ぜひとも今夜の初回は、“騙されたと思って”食べてみてほしい。きっと想像していたよりもずっと意外な味わいに驚かされ、気づけば二口、三口……と、次回以降がより楽しみになるはずだ。

■番組概要
金曜ドラマ『クロサギ』
TBS系にて、10月21日(金)スタート 毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:平野紫耀(King & Prince)、黒島結菜、井之脇海、中村ゆり、宇野祥平、時任勇気、金井勇太、永瀬莉子、冨手麻妙、木村文哉、前川泰之、山本耕史、坂東彌十郎、船越英一郎(特別出演)、三浦友和
原作:黒丸、夏原武(原案)『クロサギ』シリーズ(小学館刊)
脚本:篠﨑絵里子
プロデューサー:武田梓、那須田淳
演出:田中健太、石井康晴、平野俊一
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kurosagi_tbs/

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