藤間は今回の出演に際して公式のコメントで、「あの矢作さんが19歳という若さで結婚を申し込んだ奥さんということだったので正直プレッシャーは感じてはいますが……矢作さんを想う気持ちを唯唯一途に演じました」と述べている（※）。暢子と矢作の関係性が変われば、佳代も物語に絡んでくることになるのではないだろうか。

　この藤間といえばここ最近、一気に目にする機会が増えた俳優だ。現在は『僕の姉ちゃん』（テレビ東京系）にも出演中であり、前クールは先の読めない展開が話題を呼んだ『マイファミリー』（TBS系）にて、ある種ダークホース的なポジションをまっとうしてみせた。同作で彼女の存在を知った方も多いのではないだろうか。そして、何人もの若手俳優が飛躍するきっかけとなった朝ドラ『ひよっこ』（2017年／NHK総合）では、演劇界の生ける伝説・白石加代子が演じた立花富の若き日の姿を体現。これまた話題になったものである。昨年、日本舞踊の流派の一つである紫派藤間流の家元を襲名したニュースも記憶に新しいが、やはりこうしたルーツも現在の彼女に大きな影響を与えているのだろう。藤間は劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」の一員でもあり、筆者も何度か小劇場のステージに立つ彼女を目にしているが、ほかの同世代の俳優にはない風格と技量を有しているのを肌で感じることができた。それがいま本格的にお茶の間にも広がりつつあるというわけだ。

　さて、『ちむどんどん』に話を戻そう。これからさらに矢作にスポットが当たれば、妻の佳代にも当たることは必至。そうなれば、「矢作の妻のイメージに何となく合う」だけでは成り立たない。第100話での短い出演シーンでも証明していたと思う。このキャスティングは実力を買われてのことだろう。藤間が新たな風を起こす存在となるか。そして、放送のたびに賛否両論が巻き起こる本作において、救世主となるか。

参考

※ https://realsound.jp/movie/2022/08/post-1107049.html

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演：黒島結菜
作：羽原大介
語り：ジョン・カビラ
沖縄ことば指導：藤木勇人
フードコーディネート：吉岡秀治、吉岡知子
制作統括：小林大児、藤並英樹
プロデューサー：松田恭典
展開プロデューサー：川口俊介
演出：木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供＝NHK