『競争の番人』真飛聖にリベンジを誓う小池栄子 萩原みのりに差し伸べられた“赦し”

 ドラマ前半戦では「価格カルテル」と「優越的地位の乱用」にフォーカスを当ててきた『競争の番人』(フジテレビ系)が、8月15日に放送された第6話で描くのは「私的独占」。そもそも公正取引委員会は、独占禁止法を運用するために設置された機関だ。この独占禁止法は正式には「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」であり、もちろんそこにはカルテル(不当な取引制限の禁止)や優越的地位の濫用(不公正な取引方法の禁止)が含まれているわけだが、字面だけで捉えれば、この「私的独占」を描くことこそが公取を描く上で最もベーシックに思えてならない。

 しかしそれはつまり、公取がこれまでドラマの題材にならなかったことをより顕著に示している部分といえるのかもしれない。オープニングでも説明されたように、事業者が他の参入を排除して市場の競争を制限すること(=いわゆる排除型私的独占にあたる)。噛み砕いてしまえば、ライバルを蹴落として独り占めすることだと、小勝負(坂口健太郎)は説明する。たしかに物語として見せるには少々地味であり、なによりも“落としどころ”が肝心である。それを今回のエピソードでは、ドラマとしてはオーソドックスな感情的な部分に持ち込み、公取の淡々とした職業性と程よい塩梅で絡めていく。

 小勝負や楓(杏)たち“ダイロク”は、大手呉服店「赤羽屋」による私的独占の調査を開始する。情報を提供してくれたのは、若者向けの呉服店「ファイブシーズン」を営む井出(萩原みのり)で、彼女はかつて「赤羽屋」で働いていた。呉服業界を変えたいと考える井出は、「赤羽屋」の社長で業界を牛耳る“女帝”と呼ばれる赤羽(真飛聖)の妨害によって、織元の職人たちが次々と契約を切るようになったと訴える。実は赤羽は7年前にも私的独占の疑いがかけられていたが、立証できずに調査は打ち切りになっていた。当時赤羽の聴取を担当していた桃園(小池栄子)はリベンジを誓うのである。

 “ダイロク”メンバーから桃園というキャラクターをピックアップして物語の軸に据える(これは前回、六角と彼の父の関係性がフォーカスされたのと同じで、近年のドラマではよく見られるパターンだ)。その上で、これまで扱われた二つの案件とは異なり、“悪”にちがいないと思われた人物のそうではない部分が徐々に見えていく。物語の形勢がすっかり逆転した後半では、野心的な若者の空回りと、敵視されながらも手を差し伸べる親心があらわれ、そこには物語に必要不可欠な“赦し”が存在する。しかもその終盤の展開は、いつぞやの成人式シーズンを騒然とさせた事件を想起させられた。

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