池田エライザが語る『ハウ』がくれる豊かな気持ち 「自分のことを好きかもと思える」

 8月19日から公開される、俳優犬のベック演じるハウと田中圭演じる民夫の切なくも心温まる映画『ハウ』。主人公・民夫の同僚ながらも、愛するペットを通じて民夫と交流を深め、ハウと離れ離れになり落ち込む民夫にそっと寄り添うヒロイン・足立桃子役を演じるのは、池田エライザ。自身も動物好きという池田に、本作の見どころや作品に込めた想いを語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

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『ハウ』を通じて思い起こす自身の変化

――「ハウ」を通じて人がつながっていく、すごく温かい映画だと思いました。池田エライザさんは、出来上がりを観てどういう感想をお持ちになりましたか?

池田エライザ(以下、池田):『ハウ』の脚本をいただいた段階から、すごく心を浄化してくれる力を感じました。たぶん、今の世の中は心が疲れてしまったなという人がたくさんいると思うので、“映画館にハウに会いに行く”という1つのアクションが、そういう人たちの凝り固まった心をきっと柔らかくほぐしてくれるんじゃないかなと思っています。私も実際、この映画を観たときに、莫大な量の豊かな気持ちがたくさん出てきて、誰もがこんなに感受性でいっぱいになれるんだなと思いました。自分のことが好きかもと思える、そんな感想でしたね。

――自分自身について、今まで好きになれなかったけど好きになれたところや、心の成長を感じたところはありますか?

池田:たぶん、人より見て見ぬふりができないところがあって。ただ、忙しくなってくると、見て見ぬふりせざるを得ないということに対して、すごく苦しんでいたと思うんですよね。どっちの自分も好きじゃない。気づく自分も辛いし、見て見ぬふりをするのも辛い。でも、自分を上手に転がしてあげるというか、納得させてあげることがどんどん上手くなってきたように思います。今ではそんなことも考えないというか。気づいたときに、パッと行動できる自分も好きだし、今できないことに対して、じゃあ最大限何ができるかなという考えに切り替えられる自分も結構好きですね。

――映画の中では「ハウ」を通して、人々のいろいろな変化がありますが、池田さんにとって、心の変化を与えてくれた人や出来事はありましたか?

池田:この作品の中で、私が演じさせてもらっている桃子が民夫にペットロスについて相談することがあるんですけど、そのときに言ってくれた民夫の言葉がすごく自分の中で綺麗に腑に落ちました。私は、そもそも「ペット」という言葉や、「買う」という言葉についてすごく慎重に考えているんですけど、イコール家族を迎えるということと同じじゃないですか。そんな替えのきかない、本当に大切な家族を失ったときに、もうここで立ち止まっていたい、ここにいたいけどそれでも人生は進んでいる。気持ちの整理がつかないそんな状況をどうすればいいのか、これはずっとこのまま続くのかなという気持ちになっているときに、民夫さんが桃子に対して「悲しみが消えることはないけど、でもせめて、上手に戸棚にしまえたら……」と言う民夫のセリフが、役を超えて、すごく自分にガツンときたというか。いろいろな物事に対しても言えるなと思いました。どんなに整理がつかなくて自分が置いてけぼりになっても、それでも進まなきゃいけないときは、自分の戸棚の綺麗にしてあるところなのか、取り出しやすいところなのか、人によって違うかもだけど、そういうところに一旦しまってあげるという考え方は、すごく忘れられない瞬間でしたね。

――登場人物がたくさん出てきましたが、桃子以外で感情移入できたキャラクターは?

池田:憧れちゃうのは、宮本信子さん演じる志津さんが商店街でハウに出会うところ。旦那さん役が(石橋)蓮司さんで、それもまた1つ大切な人を亡くした方のお話です。離れ離れになってなお、その記憶が美しく思える関係性で、宮本さんと石橋さんの関係性には憧れるなと思いました。1番ときめける状態の旦那さんを思い出すとか、思い出されるとか、たぶんそこに至るまでの関係とかを聞くと大変だと思うけど、こういう関係性はいいなとすごく思いましたね。

――池田さんの中で思い出す関係はありますか?

池田:私が生まれたときは、母がまだ日本語が上手じゃなくて、コミュニケーションがあまり取れなかったんですけど、今やギャル姉妹みたいになっています。「大親友、イェイ!」みたいな感じなので、それがすごく楽しくて。私たちがそんな明るいものだから、母と一緒に住んでいる実家のわんちゃんも、大はしゃぎです。「ギャル3人、イェイ!」みたいになってきて、そういう関係の変化は良かったなと思いますね。すごく幸せです。

――今まで情熱的な役だったりいろいろな役をやられてきた中で、今回の桃子は心が頼りなく見える女性だったと思いました。演じる上で気をつけていたことはありますか?

池田:ちょうどこの作品のお話をいただいたのが、家にいる猫も難病を患っていることがわかって闘病しているときで、本当に運命みたいなことが起きたと思いました。「今の私だったら、真実でお届けできるんじゃないか」「説得力があるんじゃないか」と思って、この作品に携わらせていただきました。だから、こういうふうな演技をしようとか、役作り的なことは全くなかったです。ただ、監督と猫あるあるの話とか、保護猫ちゃんたちの現状について話したり、雑談をしながら、少しずつ私と犬童監督で共感しあえるところや賛同できる部分を作っていきました。自分の延長線上にずっと桃子がいて、家にいるときの自分にすごく近い感じでした。こう見えたいとか、こう作ろうというのは一切なくて、ただすごくニュートラルに現場にいて、感じたことをやるという感じでしたね。

――これから、こういうふうになっていきたい、こういう人になっていきたいという想いはありますか?

池田:もっと雑になりたい。もっと雑になるためには、ある程度察してもらえるほどの、人との関係性を作らなきゃいけない。自分できっちりかっちりやったほうが全部早いから面倒くさいと思うけど。でも、それだと災害があったり、1人にならなきゃいけなくなったときに、すごく孤独かもと思って、そこを面倒くさがらずに、自分が不得意なところを認めて人に伝えて、もっとちゃんと助けあった上で、雑になりたいなと思いました。「これよろしく! こっちは私がやるから」という生き方ができたらいいなと思いますね。

――結構何でも1人でやってしまうタイプなんですね。

池田:そのほうが早いから、今まではそうでしたね。せっかちなので。段取りを組むのがすごく好きで、自分の頭の中で、何分でこれをやって、何分でこれをやって……とやっていたんですけど、たぶん小さい頃からこの仕事をしていたからやらざるを得なかっただけで、本来自分がそういう性質かというと、全くそんなことはなかったと思っています。学校行くのもめんどくさかったし。そういう自分をちょっとずつ思い出して、無理しているかもと思ったら、ちょっとずつやらなくしていくようにしています。

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