『ちむどんどん』中原中也の詩が代弁する重子の寂しさ 弱気の暢子に良子が“恩返し”
加えて、暢子を馬鹿にされたことに激高し、ひどい言葉で重子の人生を否定してしまった和彦。だが、重子がその時見せた悲哀に満ちた表情を彼は忘れられないでいた。刺々しい重子の言葉や振る舞いに隠された本当の思い。それを和彦に伝えたのは、重子がいつも嗜んでいる中原中也の詩だ。
〈私の魂はただ優しさを求めていた。それをそうと気付いてはいなかった〉
中原中也『聖浄白眼』
このフレーズで、和彦は重子の中にある寂しさを知る。父親も自分も重子に“理解”を求めるばかりで、彼女を“理解”しようとしてこなかったことに気付いたのだろう。不器用なだけで、ずっと重子は2人を心で愛し続けていた。
そんな重子に、和彦は「母さんがずっと僕を愛してくれたから、今僕は人を愛することができる」と感謝を述べながら同居を提案する。もう史彦が亡くなってしまった今、3人で家族をやり直すことはできない。だから、暢子を加えた新しい家族として出発しようというのだ。
少々ズレた突拍子もない提案だが、息子から初めて優しさを注がれた重子の表情にはたしかな心の揺れが見えた。そこに、房子が考えついた「おいしくないもの」がダメ押しとなって大団円を導くことになるのだろうか。
■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00~8:15、(再放送)12:45~13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30~7:45、(再放送)11:00 ~11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK