『ちむどんどん』の恋愛模様はまるで『男女7人夏物語』 青春群像劇を彩る田良島の言葉
『ちむどんどん』(NHK総合)第13週は前週からさらに拍車をかけて、仕事と恋愛と友情に悩み振り回されるヒロイン・暢子(黒島結菜)らの姿が描かれる。それはちょうど『男女7人夏物語』(TBS系)や『ふぞろいの林檎たち II』(TBS系)のような80年代ドラマの様相を帯びている。誰かの悩みがまた誰かの想いや苦悩と呼応し、話がどんどん複雑に絡み合いこじれてしまうから厄介だ。それぞれが何かと何か、誰かと誰かの狭間で揺れ動いている。
交際歴もない中、暢子との結婚話をどんどん前に進める智(前田公輝)に対して“このまま皆との関係性が変わらなければいいのに”と願いながらも、自身の中にある和彦(宮沢氷魚)への好意に気づいてしまった暢子。同じように和彦も恋人の愛(飯豊まりえ)との縁談に何か引っ掛かりを覚え、有耶無耶な態度をとってしまう。さらには、暢子に対しても何だか誤解を招きかねない対応を続けている。誰に対しても“悪者”になることを避けようとする和彦の、本人としてはおそらく“中立”なつもりなのであろう態度が結局のところ最も相手を傷つけている。白黒をつけず何事もグレーのままにする生殺し状態で、一番残酷だとも言えるだろう。
何だか“結婚”という節目を前にモラトリアム期間にいるかのような彼らの群像劇をさらに際立たせるのがそれぞれを見守る大人たちの言葉だ。
東洋新聞の上司・田良島(山中崇)は和彦に、自身の説明のつかない格好悪い思いからも逃げ出さないようにと諭す。
「何だ、その顔は。まるで“この完璧な結婚話に対する僕の漠然とした焦燥感の根拠を言い当ててほしい”とでも言いたげだな」
「いいぞ。この哀愁に満ちた中間管理職に青春の悩みを打ち明けてみろ」
「みっともない自分から逃げるな。どうなるにせよ、ちゃんともだえ苦しめ。青春しちゃえよ」
“青春”という言葉を繰り返し、とにかく自身の中でのみモヤモヤを抱えるのではなく相手と全力で対峙することを促す。そして、新聞記者としての夢と両親からの期待や女性としての幸せの間で揺れる愛にも、そんな彼女の悩みをお見通しであるかのような助言をする。