5月27日からシーズン4 Vol.1の配信が始まったNetflixの人気シリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』。超能力少女イレブンを中心に、子どもたちが恐ろしい超常現象に挑んできた本シリーズも、シーズン5のフィナーレに向けて、いよいよ佳境に入ってきた。2016年のシーズン1の配信から6年、シリーズの人気を牽引してきた子役たちは、いまや人気スターとしてさまざまな作品に出演している。ここではそれぞれのキャストの成長と、活躍を振り返ってみたい。

出世頭フィン・ヴォルフハルトは大作映画に引っ張りだこ

　オタク少年たちのリーダー的存在、マイクを演じるフィン・ヴォルフハルトは、『ストレンジャー・シングス』のメインキャストのなかでも出世頭と言える。シーズン1が配信された翌年、2017年に彼は『IT／イット “それ”が見えたら、終わり。』にお調子者のリッチー・トージア役として出演。スティーヴン・キング原作の人気作品のリブートという注目度も高かった本作で、ルーザーズクラブの一員として、主人公格のキャラクターで長編映画デビューを飾る。2019年にはその続編『IT／イット THE END “それ”が見えたら、終わり。 』でも同役を演じ、『ストレンジャー・シングス』のファンだけでなく、映画ファンにもおなじみの存在に。

　ヴォルフハルトの快進撃はつづき、2019年にはCGアニメーション映画『アダムス・ファミリー』で声優デビュー。さらに2021年には80年代の大人気シリーズ『ゴーストバスターズ』の続編『ゴーストバスターズ／アフターライフ』で、イゴン・スペングラー博士の孫トレヴァーを演じた。『ストレンジャー・シングス』シーズン2で彼が演じるマイクは、ハロウィンに『ゴーストバスターズ』の仮装をしていたのだから、運命的な巡り合わせだ。

　またヴォルフハルトは、2017年に地元バンクーバーの友人たちとCalpurniaというバンドを結成。ギター＆ボーカルを務め、ミニアルバムのリリースや音楽フェスへの参加など、ミュージシャンとしても精力的に活動した。同バンドは2019年に解散したが、現在はオルタナティブロックユニットThe Aubreysのギター＆ボーカルとして、2021年にはアルバム『Karaoke Alone』もリリース。さらにヴォルフハルトは、2019年にはサンローランの秋冬コレクションのキャンペーンモデルに起用された。現在19歳、身長178cmとなり、すらりとした体型の彼はモデルとしても活躍の幅を広げている。

　今後の出演作も、2022年12月にNetflixで配信予定の『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』や、A24製作のファンタジー映画『The Legend of Ochi（原題）』など、注目作が目白押しだ。

ファッショニスタとしても注目を浴びるミリー・ボビー・ブラウン

　『ストレンジャー・シングス』の鍵を握る超能力少女イレブンは、シーズン1が配信されるやいなや新たなカルチャーアイコンとなった。彼女を演じるミリー・ボビー・ブラウンも、当然多方面からの注目を浴びることになる。そんな彼女にいち早く目をつけたのが、ファッション界だ。2017年、ブラウンはカルバン・クラインのセミオーダーライン「バイ・アポイントメント」のキャンペーンモデルに起用された。翌月彼女はモデルエージェンシーと契約し、モデルとして数多くのファッション誌の表紙を飾っている。2021年にはルイ・ヴィトンのブランド・アンバサダーにも就任。ファッショニスタとしても注目を集めるようになった彼女は、『ストレンジャー・シングス』シーズン4のプレミアにはイレブンとは全く違うブロンドのストレートヘアで登場し、その大人びた雰囲気でファンを驚かせた。

　もちろん俳優業も順調で、彼女は2019年の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で映画デビューを果たす。彼女が演じたマディソン・ラッセルは続編『ゴジラvsコング』（2021年）でも重要な役割を担った。2020年には『エノーラ・ホームズの事件簿』でタイトルロールを演じるとともに製作総指揮を兼任、高評価を得た。同作は2022年に続編の配信が予定されている。2023年に配信が開始されるNetflixオリジナル映画『Damsel（原題）』では、ドラゴンの生贄にされるプリンセスを演じるという。こちらでも彼女は製作総指揮を兼任し、ただ演じるだけでなく積極的に映画製作に参加しようという姿勢がうかがえる。その後は2本の映画で主演を務めることが決定しており、そのうちの1つ『The Thing About Jellyfish（原題）』はドラマ映画だ。これまで『ストレンジャー・シングス』と似たSF・ホラー要素のある作品やアドベンチャー映画への出演が多かった彼女だが、新作では大人に近づいた18歳の俳優として、新たな顔を見せてくれるのではないだろうか。

幅広い作品で主演をこなすノア・シュナップ

　シーズン1配信時点で11歳と最年少のノア・シュナップだが、子役キャストのなかでは当時最も経験豊富だったと言っていいだろう。彼は『ストレンジャー・シングス』出演以前にも、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ブリッジ・オブ・スパイ』（2015年）でトム・ハンクス演じる主人公の息子を演じたり、3DCGアニメーション映画『I LOVE スヌーピーTHE PEANUTS MOVIE』（2015年）でチャーリー・ブラウンの声を務めたりしていた。そんな彼は『ストレンジャー・シングス』でさらに評価を高め、俳優としてキャリアアップしていく。

　2019年に公開された『エイブのキッチンストーリー』で、シュナップはイスラエル系の母とパレスチナ系の父を持つ12歳の少年エイブ役で映画初主演を飾った。家族内の対立に悩む彼は、フュージョン料理のシェフ、チコ（セウ・ジョルジ）と出会い、自分にしか作れない料理を探求する。複雑な思いを抱える多感な少年が、料理を通して自分を表現する姿を好演した。一方、2020年の主演作『アーニャは、きっと来る』は、シリアスなトーンの作品だ。シュナップが演じたのは、ナチス占領下のフランスで、ユダヤ人たちのスペインへの脱出を手伝う羊飼いの少年ジョー。彼はユダヤ人に協力する一方であるドイツ兵とも親交を深め、さまざまな人生を垣間見て大人へと成長していく。またシュナップは同年、アダム・サンドラー主演のコメディ映画『ヒュービーのハロウィーン』にも出演しており、幅広いジャンルで活躍する俳優となっている。現在17歳の彼は、2021年にはペンシルベニア大学にも合格。今後は学業と俳優業の両立を目指していくことになるだろう。

チャリティにも熱心に取り組むゲイテン・マタラッツォ

　シーズン4ではすっかり「裏側の世界」のエキスパートとなり、調査を引っ張るダスティン。愛嬌たっぷりの彼を演じるのは、ゲイテン・マタラッツォだ。彼は先天性疾患である鎖骨頭蓋異形成症の持病があり、それがダスティンの設定にも反映されている。これは生まれつき鎖骨が形成されず、頭蓋骨や顔面の筋肉、歯の発達に影響を及ぼす珍しい難病だ。『ストレンジャー・シングス』で知名度を高めたマタラッツォは、それを活かしてこの病気に関する啓蒙活動を行ったり、患者に必要な歯科手術の支援をするCCDスマイルズへの募金活動を熱心に行っている。現在19歳の彼は自身の影響力を自覚し、社会に還元しているのだ。

　一方の俳優業のほうはというと、『ストレンジャー・シングス』に出演する以前からミュージカルで活躍していた彼は、同作出演後も2018年には『シンデレラ』、2019年には『イントゥ・ザ・ウッズ』で舞台に立っている。同年、彼はアニメ映画『アングリーバード2』で声優デビュー。今後予定されているのは、まず2022年配信予定のNetflixアニメ映画『エルマーのぼうけん』への声の出演。またコメディ映画『Honor Society（原題）』も公開される。

　さらにNetflixのリアリティ番組『プランク・エンカウンターズ －恐怖のドッキリ－』（2019年～）ではホスト兼製作総指揮を務め、俳優業とは違った才能を発揮。その多彩さに今後も注目だ。