何者なのかと麗子（綾瀬はるか）に問われ、「言いたくない」と小さく答える篠田（大泉洋）。5月23日に放送された『元彼の遺言状』（フジテレビ系）第7話は、篠田の過去と正体へとつながるエピソードになると思いきや、“くらしの法律事務所”に次々と舞い込む厄介な案件をさばいていくさまが描かれていった。

　それでも“バディ解消”の危機を予感させた冒頭の入り方はある意味正解であり、麗子と篠田のバディから、そこに紗英（関水渚）や黒丑（望月歩）、そして津々井（浅野和之）をも巻き込んだ“チーム”の誕生を感じることができよう。

　津々井が痴漢の嫌疑をかけられ、職場や家族にも言えないからと麗子に弁護を依頼してくる。例によって金にならない仕事は引き受けない主義の麗子だったが、大規模なM＆Aが控えているヒグマ食品の案件を任せてもらえるという条件に乗って弁護を引き受けることに。そんななか、黒丑からは太客が厄介そうな遺産トラブルを抱えているという依頼が舞い込み、さらにヒグマ食品では会社の目玉である社員食堂とシチューを狙った脅迫状についての相談を持ちかけられてしまうのである。

　「5月23日、社員食堂の毒入りシチューで死人が出る」という脅迫状の内容を見て、篠田はアガサ・クリスティーの『予告殺人』と結びつける。脅迫状をめぐる対応に手をこまねいているうちにさらなる脅迫行為が続き、その果てに明らかになる労働問題。また津々井の痴漢疑惑の裏に隠されていた、過去に津々井が担当した大企業への集団訴訟の顛末。そして黒丑がもってきた、父の後妻とトラブルを抱えた女性の依頼。三つの事件が複雑に絡み合うようにして物語が形成されていくのだが、それらが何らかのかたちで繋がっているというこの手の筋書きの典型にはあえて進まず、見事にすべてが平行線のままそれぞれに幕引きが用意される。