深川麻衣の演技はなぜ人々を魅了するのか? 『特捜9』でも期待される“自然体”な魅力

 4月6日にスタートする人気刑事ドラマ『特捜9 season5』(テレビ朝日系)に出演が決定した深川麻衣。昨年は主演映画『おもいで写眞』を筆頭に、映画『僕と彼女とラリーと』や『婚姻届に判を捺しただけですが』(TBS系)、『青天を衝け』(NHK総合)など、多数の作品に出演し、彼女の存在を見ない日はなかった。2021年の活躍は間違いなく深川の俳優キャリアの転換期であったように思える。

 乃木坂46を卒業後、順調と言えるキャリアを歩んできた深川は、アイドル時代には“聖母”とも言われ、その柔和で温厚な性格が彼女のイメージとして根付いていた。テンカラットへ移籍する2016年以前は俳優としてのキャリアはわずかだったものの、移籍後は俳優として本格的に始動。2016年の『プリンセスメゾン』(NHK BSプレミアム)を皮切りに、着々と俳優としての存在感を増してきた。

 充実したキャリアを形成するなかで、深川がここまで躍進したのは、彼女の“自然体”な演技にあるのだろう。彼女の演技はどこも嘘くさくなく、そして大仰しさを感じることもなく、映像作品の中の役柄として常に最適解として存在している。役者が何者かを演じる際には、演じる役柄以外の様々な要素(演者のキャラクターやイメージなど)が絡まり合い、役そのものが決定づけられるということが多いが、深川の場合はそうした要素が一切排除されていて、フラットに演じているのだ。深川が多くの作品のキャストに抜擢されているのは、彼女のそうした魅力が求められているからなのではないだろうか。

 深川が俳優として大きく注目を集めることとなったのは、映画初出演ながら主演に抜擢された『パンとバスの2度目のハツコイ』だ。深川は同作品で「第10回TAMA映画賞最優秀新進女優賞」を受賞。深川は初の主演という大役にもかかわらず、今泉力哉が描く世界観の中で、恋愛をこじらせてしまった市井ふみという女性を優しく包み込むように繊細に演じきった。本作は登場人物の感情の揺れ動きが丁寧に描かれており、深川はそんな作品のエッセンスを透明感のある繊細な演技でとてもよく表現していたように思う。

 そこから『まんぷく』(NHK総合)や『日本ボロ宿紀行』(テレビ東京系)、『愛がなんだ』などの作品への出演を通じて、深川のイメージとは反する振り切った演技にも挑戦。自然体を武器にしてきた深川が俳優として新たな強みを手にしたような印象を受ける。特に『日本ボロ宿紀行』で、桜庭龍二(高橋和也)のマネージャーの篠宮春子役という新たな役柄に挑戦した深川は、龍二に対して怒鳴りつけたり、泥酔して迷惑をかけたりと、喜怒哀楽の激しく芯の強い女性を堂々と演じきった。深川に対する世間が持つイメージとのギャップから多少の違和感があって然るべきだと思っていたが、深川が見せた春子の表情や仕草は人が無意識に息を吸うようにわざとらしさがまったくないのだ。

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