『カムカムエヴリバディ』算太はなぜいつも笑う? 悲劇を喜劇に見せる濱田岳

 濱田の演技を振り返ってみると、算太の悲哀に満ちた生き様は彼が憧れたチャップリンの作品のようだ。好意を抱いていた雪衣(岡田結実)が勇(村上虹郎)の部屋から出てくるのを目撃したとき、濱田は彼らの間に何があったのかをのみ込むように間をあけて、フッと弱々しく笑ってみせた。お金を持ち逃げする前には、ガラス戸に映った自分の姿を見て乾いた声で笑っていた。算太は自らの悲劇を喜劇に変えようとしていたのだと思う。算太の行いが安子の努力を無下にしたのは事実だ。しかし濱田が、やんちゃで勝手気ままだけれど、苦しみも悲しみも素直に見せず、笑いながら逃げ出した算太の痛みを理解して演じているからこそ、算太はただの悪役にならない。

 安子の娘が目の前にいるとわかったとき、サンタは姿を消す。妹と長いこと会っていないと口にしたサンタの目には微かに自責の念が見えたが、回転焼き屋「大月」の前で「るい」の名前を聞くとサンタはうろたえる。濱田はるいの姿に懐かしむような眼差しを向けながらも、「るい……」と呟く弱々しい声色で、彼の覚悟のなさを表現したように思う。

 るいの回転焼きを食べることも、るいと対面することもなく、サンタはそれきりひなたの前に姿を現さなくなった。都合が悪くなるといなくなる、そのことが皮肉にもサンタ=算太であることを示す。算太は安子、るい、ひなたをつなげるきっかけにはならない、ということだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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