そんな彼女が向かったのは、悲しい時やなんとなく不安な時に行く、自分の子供時代の象徴的な場所「映画村」。その道中、気がつけば座席に正座しながら回転焼きを食べるひなた。この、彼女が父親と観ていた朝ドラ『おしん』に重なる演出は巧みだ。同級生は敷かれたレールを選ばず、自分でレールを作ると言う。それと対比されるかのように、あれほど「電車の中で正座してるで？」とバカにしていたヒロインと同じ格好で電車に乗り揺られている。「おしん、どこに向かってんのやろ」とつぶやいた言葉が、将来を想像できないひなた自身の心理描写に繋がっているのだ。そうしてとりあえず辿り着いた「映画村」という場所が、やはり彼女の“目的地”となるのかもしれない。

　侍のように決めたことは命懸けで守る。そんな生き方に憧れていたものの、今の自分には命懸けで守りたいと思う目標も夢もない。しかし、今はふと店番を頼まれて自分にも“レール”があったことに気づくひなた。そこに現れる、謎の人物（本郷奏多）。『カムカムエヴリバディ』のヒロインたちが、これまでみんな“店番中の出会い”によって運命を変えられてきたように、この出会いもひなたの乗る列車の行き先に、影響を与えるのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演：上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本：藤本有紀
制作統括：堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽：金子隆博
主題歌：AI「アルデバラン」
プロデューサー：葛西勇也・橋本果奈
演出：安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか　
写真提供＝NHK