『ホーム・アローン』の笑いには“痛み”が伴う 愛され続ける映画に成長させた功労者とは?
もちろん、カルキンにもダブルがつき(ラリー・ニコラス)、計3名のスタントマンが現場で動いていたわけだが、文字通り体を張った彼らの活躍はスタント業界そのものに強烈なインパクトを与え、いまや業界内では「空中を思いっきり飛んで背中から落ちる」ことを“ホーム・アローン”と呼ぶようだ。
しかし、彼らの努力を無駄にせず、痛みという笑いに昇華したのは紛れもなくペシとスターンだ。コロンバスが映画学校(アメリカン・フィルム・インスティチュート:AFI)の学生向けに本作のスタントを解説する動画が、AFIのYouTubeアカウントに投稿されている。その動画で彼はマーヴの身に起きた悲劇をいくつか解説しているのだが、これが面白い。例えばあの足裏に刺さる釘は、実際踏むと板に沈んでいくゴム製のもので(もちろん)刺さっていないと言う。しかし、それが刺さったテイで踏んだ時の絶叫、“ホーム・アローン”を決めるスタント、そして再びスターンの痛がる仕草と、畳み掛けるような演出が繰り出される。このスターンの名演技で締めてこそ、はじめて一連の動作に“笑い”が生まれるのだ。
もともと予算の少ない作品だからこそ、仕掛けもお手製のものが多かった。マーヴがクリスマスオーナメントを踏んで痛がるシーンに関しては、オーナメントが本物で、マーヴの足が“偽物”なのだそう。よく見ると、彼の足がやけに大きく見えるのだが、これはスターンがゴム製の足を履いているからだ。足首の部分の繋がりがわからないほど一見精巧だが、つま先部分を細かく見ると、確かに指がくっついている。
こんなふうに、制作陣のあらゆる努力を経て製作され、大ヒット映画になった『ホーム・アローン』。もともとはこんなにヒットするとは世間も制作陣も思っていなかった。確かに、当時のCGIでスタントシーンを作られていたら、我々は何度も“偽物のそれ”を観たいと思わなかったかもしれない。何事にもリアルにこだわった制作陣のクラフトマンシップこそ、本作が長年愛され続ける理由であり、讃えられるべきものであるのだ。
■放送情報
『ホーム・アローン』
日本テレビ系にて、12月24日(金)21:00〜22:54放送
監督:クリス・コロンバス
脚本・製作:ジョン・ヒューズ
撮影:ジュリオ・マカット
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:マコーレ・カルキン、ジョーン・ペシ、ダニエル・スターン、ジョン・ハード、ロバーツ・ブロッサム、キャスリン・オハラ、アンジェラ・ゴーサルズ、デビン・ラトリー、ゲリー・バンマン、ヒラリー・ウルフ、ジョン・キャンディ、マイケル・C・マロンナ、テリー・スネル
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