山田杏奈、銀幕デビューから5年でトップランナーに ティーンエイジャーの心情の代弁者?

 さて、ここからは『ひらいて』『彼女が好きなものは』までの最近の山田のキャリアについても簡単に振り返ってみたい。この2021年はのっけから、出演した映画『名も無き世界のエンドロール』『哀愁しんでれら』『樹海村』の3作が公開された。各作品のジャンルはバラバラだが、ヒロイン、ヒロインの妹役、主人公と、作品におけるポジションもバラバラ。この3作品が立て続けに公開されたことによって、演じ手としての彼女の柔軟性が十分に証明されたのではないかと思う。現在のように“主役級”の役どころが続いている山田だが、脇に収まるべきときは正確に収まり、主役や、各シーンの中心となる人物を立てる。この的確なポジショニングも、優れた俳優には欠かせない力の一つだ。

 このように山田は“映画俳優”の印象が強いものの、ときにはドラマにも出演し好演を残している。昨年放送された主演ドラマ『荒ぶる季節の乙女どもよ。』 (MBS/TBS)や、ゲスト出演した『珈琲いかがでしょう』(2021年/テレビ東京系)では、彼女のイノセントな魅力が大いに活きていたのが印象深かった。山田杏奈という俳優について、“いま最も旬な存在”という認識の方がいるかもしれないが、過去作を振り返ってみれば、彼女が元から高い表現力を持つ俳優であったことが分かるだろうと思う。山田が単にチャーミングな俳優でないことは周知されつつあるはずだが、特に『ミスミソウ』(2018年)を未見の方は、いますぐに手を伸ばしていただきたい。

■公開情報
『彼女が好きなものは』
全国公開中
出演:神尾楓珠、山田杏奈、前田旺志郎、三浦りょう太、池田朱那、渡辺大知、三浦透子、磯村勇斗、山口紗弥加、今井翼
監督・脚本:草野翔吾
原作:浅原ナオト『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』(角川文庫刊)
エグゼクティブプロデューサー:成宏基
プロデューサー:前原美野里、宮本綾
音楽:ゲイリー芦屋
企画協力:KADOKAWA
企画・制作・プロデュース:アニモプロデュース
配給:バンダイナムコアーツ、アニモプロデュース
製作:「彼女が好きなものは」製作委員会
2021年/日本/121分/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー/デジタル/PG12
(c)2021「彼女が好きなものは」製作委員会
公式サイト: https://kanosuki.jp

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