『恋です!』美しいハッピーエンドに ユキコと森生が見つけた、2人ならではの“普通”の形

 「見えても、見えなくても。みんな多かれ少なかれ、誰かに頼らなきゃ無理だ。誰かと一緒だと、できることが増えて、世界が広がるだろ?」ーー。ユキコ(杉咲花)の父・誠二(岸谷五朗)の言葉に、本作が描いてきたメッセージが詰まっているように感じる。頼れる相手が増えるほど、できることが増えていく。迷惑かもしれない……と躊躇することもあるかもしれないが、大事な人に頼られてうれしくない人などいないのだから。

 『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(日本テレビ系/以下『恋です!』)最終話は、ユキコと森生(杉野遥亮)の別れから1年後の世界が描かれた。調理に携わる仕事がしたいという夢を諦めて、事務仕事に励むユキコ。「やりたいことと、できることはちがう」と折り合いをつけていた彼女の心が、森生との再会で変わり始める。

 「すごいな、森生は」という獅子王(鈴木伸之)の言葉に、共感した人は多いのではないだろうか。愛する人のためなら、どこまでもまっすぐな森生。この3カ月間、ドラマを通して彼の姿を見ることで、心が浄化されていくような気がしていた。白杖のユキコを、特別な存在にしない。空(田辺桃子)や青野(細田佳央太)に対しても、色眼鏡で見るのでなく、その人そのものと向き合ってきた。ライバルだと思っていた獅子王に告白された時にも、「照れんじゃねぇか」と満面の笑みで返し、「ごめん」ではなく、「ありがとう」で終わらせる。森生の滲み出る優しさには、幾度となく感動させられてきた。

 そんな彼の、まっすぐな愛をもらったユキコ。笑顔がチャームポイントの彼女も、世間の冷たさに触れて、苦しんだこともあったはずだ。それでも森生と出会い、2人だけの“普通”の形を見つけることができた。「この世界は、私が思っているよりも優しいんだってことを、黒川が教えてくれた」と言うユキコと、「ユキコさんのこの目が、俺の世界を変えてくれた」と微笑む森生。2人は一緒に、キッチンカーを営むことになるのだろう。運転担当は森生で、料理担当はユキコ。お互いができることをやって、支え合いながら生きていく。JUJUが歌う主題歌「こたえあわせ」の歌詞<あなたとなら見違える 世界を愛せる/気がした 出会えた ふたりでいれば/これから触れる明日は とても果てしないけど/今までより夢見るのが怖くないよ>どおりの美しいハッピーエンドとなった。

 2人ならではの“普通”の形を見つけたのは、ユキコと森生だけではない。イズミ(奈緒)と獅子王も、最後には幸せな姿を見せてくれた。森生のことが好きだった獅子王にとって、イズミは恋の対象ではないかもしれない。しかし、体調不良で動けなかった時、真っ先に浮かんだのが、イズミの顔だった。誰にも頼りたくない、頼れないと思って生きてきたのに、なぜかイズミだけには、弱い自分を見せたいと思ってしまう。一緒にいたいと願ってしまう。そんな獅子王の複雑な気持ちをすべて包み込み、「一緒にいたいです」とハグをしたイズミ。それでも、2人の関係は“恋人”ではない。かつてのように、“推し”と“ファン”ともちがうだろう。その名前は、これから2人で決めていけばいいのだ。

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