障害を描くドラマとしての新しい視点 『恋です!』が従来の作品と一線を画すのはなぜか

 杉咲花と杉野遥亮演じる初々しいカップルが微笑ましい『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』(日本テレビ系/以下『恋です!』)。本作は弱視であるがゆえに白杖を使うヒロイン、ユキコ(杉咲花)とヤンキーの森生(杉野遥亮)が惹かれ合い恋に落ちる様子を描くラブコメディだ。毎週のように起こるふたりの“キュン”とするシーンや、心温まるストーリーが視聴者を癒してくれている。本作の描く主題のひとつにあるのは、障害のあるヒロインが真っ直ぐに恋をする姿だろう。これまでにも「障害」を描いたドラマは多々あったが、そのイメージを覆すような明るく前向きなメッセージが新鮮であるのは、現代社会の価値観の変化が取り入れられているからだと感じた。今回は過去のドラマを振り返りながら、『恋です!』が築き上げる新しい視点について紐解きたい。

 過去にも闘病や障害を持つ主人公に寄り添い、生まれた恋をテーマにした作品が作られてきた。中でも『Beautiful Life 〜ふたりでいた日々〜』(TBS系)、『1リットルの涙』(フジテレビ系)、『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)などは病気や障害によって引き起こされる苦悩や苦しみの渦中にある愛の形が描かれていた。そこにフォーカスされたのは、苦しみを乗り越える「強さ」や困難に立ち向かう「健気さ」だろう。

 その一方で『恋です!』では、こうした苦悩を丁寧に描きつつも、その軸に置かれているのはユキコと森生の対等な恋を通して「相手を想うこと」や「与え合う姿」。時にはつい笑ってしまうような森生の真っ直ぐさや、青野(細田佳央太)の冗談も盛り込まれ、涙を流しながら観るというよりは、笑顔になれるということが重視されているように感じた。それでいてコメディに頼りすぎず、弱視について理解を深めることができる“学び”もあり、非常にバランス感覚に優れているのだ。

 そんな『恋です!』に救われる人は多いのではないだろうか。障害のあるなしに関係なく、多くの人間にはユキコや森生のように得意なことがあれば苦手なこともある。日常生活の不便さに大小はあれど、「苦手」のない完璧な人などいない。それを我々は日々、支えあって生きている。そんな当たり前のことを、本作は涙を武器にせず新たな視点から描いているのだ。

関連記事