『ダーク・ウォーターズ』本編映像公開 名曲「カントリーロード」は何を暗示する?

 12月17日より全国公開されるマーク・ラファロ主演映画『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』の本編映像が公開された。

 『キャロル』『ワンダーストラック』のトッド・ヘインズが監督を務めた本作は、巨大企業の隠蔽を暴き、立ち向かった一人の弁護士に光をあてた物語。マーベル・シネマティック・ユニバースのハルク/ブルース・バナー役で知られるラファロのほか、アン・ハサウェイ、ティム・ロビンス、ビル・プルマンらが出演する。

 1998年オハイオ州の名門法律事務所で働く企業弁護士ロブ・ビロットが、思いがけない調査依頼を受ける。ウェストバージニア州パーカーズバーグで農場を営むウィルバー・テナントは、大手化学メーカー、デュポン社の工場からの廃棄物によって土地を汚され、190頭もの牛を病死させられたというのだ。さしたる確信もなく、廃棄物に関する資料開示を裁判所に求めたロブは“PFOA”という謎めいたワードを調べたことをきっかけに、事態の深刻さに気づき始める。デュポンは発ガン性のある有害物質の危険性を40年間も隠蔽し、その物質を大気中や土壌に垂れ流してきたのだ。やがてロブは7万人の住民を原告団とする一大集団訴訟に踏みきる。しかし強大な権力と資金力を誇る巨大企業との法廷闘争は、真実を追い求めるロブを窮地に陥れていく。

『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』カントリーロードが流れる本編映像

 今回公開された本編映像は、ラファロ扮する弁護士ロブ・ビロットが、大手化学企業デュポン社によって汚染されたという農場を調査するため、ウェストバージニア州パーカーズバーグを訪れるシーン。ハイウェイを走るロブのカーラジオからは、ジョン・デンバーが歌う70年代の大ヒットソング「カントリーロード」が聴こえてくる。日本でもスタジオジブリの長編アニメ映画『耳をすませば』(1995年)の挿入歌として有名なこの曲は、世界20ヶ国以上の国々で愛され、イギリスでは“ドライブの時に聴きたい歌”のナンバーワンにも選ばれている。

 本来であればドライブシーンにぴったりの選曲といえるが、ヘインズ監督の演出には真逆の意味が込められている。映像には、歌詞で謳われる古き良きアメリカの美しい風景とはかけ離れた、薄暗くスモッグのかかったような町並みが映し出される。建物や学校のフェンス、路上のごみ箱といった至る所にデュポンのロゴがあり、この町がデュポン社に依存していることが伺える。作品の舞台であるパーカーズバーグは、デュポン社が発ガン性有害物質PFOAの危険性を40年間も隠蔽し大気中や土壌に垂れ流してきた汚染地であり、2002年に7 万人の住民を原告団とする一大集団訴訟の震源地となった場所だ。ヘインズ監督は、この地を訪れた時の印象を「巨大な工場から煙が出ていた。あの霧と靄が肌から浸透していくのを感じるんだ。そこから立ち去った後もかなり長い間その感じは払拭できないんだ」と回想する。

 “天国のようなウェストバージニア”からはじまる「カントリーロード」の歌詞。ヘインズ監督は、「今すべてが危機に瀕しているんだ。この映画を早く観てもらい、この問題について話してもらい、聞いてもらいたい」と語る。地球上の環境が脅威に晒されている時代性を反映した映像となっている。

■公開情報
『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』
12月17日(金)TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
出演:マーク・ラファロ、アン・ハサウェイ、ティム・ロビンス、ビル・キャンプ、ヴィクター・ガーバー、ビル・プルマン
監督:トッド・ヘインズ
配給:キノフィルムズ
提供:木下グループ
2019年/アメリカ/英語/126分/ドルビーデジタル/カラー/スコープ/原題:Dark Waters/G/字幕翻訳:橋本裕充
(c)2021 STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC.
公式サイト:dw-movie.jp

関連記事