『おっさんずラブ』から『恋する寄生虫』まで 林遣都の演技の“味わい深さ”を紐解く
現在、林遣都が出演する『恋する寄生虫』が公開中だ。小松菜奈とW主演となった本作で、林は社会と背を向けて生きる青年に扮している。ここ最近で演じた役柄とは全く異なるキャラクター(しかもラブファンタジー!)がすこぶる魅力的だ。そんな林は今年、『犬部』、『護られなかった者たちへ』、そして本作と3本の出演作が公開され、うち2作で主役に。そこで今回は『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)でブレイクを果たした“俳優・林遣都”の味わい深さにフォーカスしてみたい。
2007年に主演作『バッテリー』で俳優デビューを飾り、日本アカデミー賞、キネマ旬報ベスト・テン、日本映画批評家大賞ほかその年の「新人賞」を多数受賞した林遣都。以来、映画、テレビ、舞台と各方面で着実に出演作を重ねてきた。
近年、一躍注目の的となったのは、社会現象的ブームとなった『おっさんずラブ』でのエリート営業部員・牧凌太役だろう。天空不動産の支店で出会った主人公・春田創一(田中圭)に片思いをした牧は、同じく“はるたん”に想いを寄せる営業部長の黒澤武蔵(吉田鋼太郎)を押しのけ見事に春田のハートを射止める。そして『劇場版おっさんずラブ LOVE or DEAD』(2019年)では、牧は天空不動産のエースとして本社勤務に返り咲き、本社肝いりのプロジェクトを遂行するため寝食を忘れて仕事に没頭する。そのために「ただ好きな人と一緒にいたい」と願う春田とすれ違っていくのだが、春田との結婚観の違いや夢の実現に悩み、自分の想いを上手に言葉にできない不器用な牧の愛らしさを林は人間的成長も含めて体現した。
また、青森北里大学獣医学部の学生が設立した実在する動物保護サークルをモチーフにした『犬部!』(2021年)では、主人公である花井颯太を熱演。花井は獣医になるためには避けて通ることができない動物の生体を使っての外科実習を拒んだ上で教授を納得させる研究を成し遂げ、動物のお医者さんとなってからは採算度外視で瀕死の生き物たちの治療にあたる強い信念の持ち主で、林は愚直なほど真っすぐでピュアな魂を持った獣医師をブレることなく演じきった。
一方、東日本大震災から約10年後を舞台とする社会派ミステリー『護られなかった者たちへ』(2021年)では、震災で妻と息子を失った笘篠刑事(阿部寛)とバディを組む若手刑事・蓮田智彦役を務めた林。震災を身近に感じず、不平不満をたびたび口にするが、凄惨な連続殺人事件の容疑者となった青年・利根(佐藤健)の捜査にあたるうち、様々なことを経験して変わっていく。今年4月放送の『ドラゴン桜』第2シリーズ(TBS系)で演じた真意が見えない東大卒のIT企業家・坂本智之と同様にダークな面も感じさせる少しクセのある役柄だが、嫌悪感を与えることなく成立させているのは彼の卓越した演技力の賜物だろう。