松村北斗「僕には心に決めた人がいます」 『カムカム』安子と稔に立ちはだかる壁

 英語講座を放送しなくなったラジオは、連日、日本軍の戦果を伝えている。衣料品は自由に買えなくなり、それは衣料品の会社にとっても自由に製造ができないことを表していた。NHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』が第3週初日を迎え、お互いを想う安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)に壁が立ちはだかる。

 喫茶店「Dippermouth Blues」にやってきた安子は、コーヒー豆も手に入りにくくなっていることを知る。そんな中、定一(世良公則)がかけたレコード「On the Sunny Side of the Street」に耳を傾ける安子は、稔とここにきた時を思い出す。しかし突然、ガラスが割れる音が。店のガラスが割られたことに、定一は「こりょお貼った連中じゃろ」と落ち着いていたが、「敵性音楽ヲカケルナ!」の貼り紙を目にした安子は緊迫した表情を見せた。

 春休みに帰省した稔は、久しぶりの家族団欒を楽しむ。千吉(段田安則)は会社の事業を拡大するつもりだと稔に告げた。稔は、膨大な資金を必要とするその計画に賛同できないと言うが、千吉の話には続きがあった。ある銀行が条件付きで資金を用立てるというのだ。それはすなわち、稔と銀行の頭取の娘との縁談を意味していた。しかし稔は千吉が話すのを遮り縁談を断る。そして千吉らにこう伝えた。

「僕には……心に決めた人がいます」


 相手を問われ、稔は意を決して「たちばなのお嬢さんです」と伝えるが、千吉も美都里(YOU)もいい顔をしなかった。

 ここでの松村の演技が、決して派手ではないが印象に残る。千吉が「たちばな?」と聞き返した時に、松村はわずかに動揺した様を見せた。後の台詞で「反対されることは分かっていました」と明かしているが、そのわずかな動揺で、その場の緊張感が増したことが分かる。安子について「僕の人生には必要な人なんです」と口にした時には、目線は落としていたが、姿勢は崩さず、はっきりと言葉にした姿から、稔の誠実さと安子への想いの強さが伝わってくる。また物腰が柔らかい稔には珍しく、「あんたはだまされとるんよ」と口を挟む美都里や安子との結婚は「うちにとって何の特にもならん」と口にした千吉に、思わず大声をあげた姿からも安子への真剣な想いを感じる。

 第3週初日は、お菓子を配達するために雉真家に足を運んだ安子を待ち構える美都里の姿で幕を閉じた。安子と稔のお互いを想い合う様は見ていると優しい気持ちになるが、戦争により日常が変わっていくさまと稔の気持ちを知った千吉と美都里の様子が不安をかき立てる。美都里は安子に何を告げるのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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