『おかえりモネ』鈴木京香、言葉の中に宿る説得力 母親役でみせた円熟味

 連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合)第21週「胸に秘めた思い」で、ついに百音(清原果耶)の母親・亜哉子(鈴木京香)が小学校教師を辞めた理由が明かされそうだ。

 地元・気仙沼で働くことを決めた百音に亮(永瀬廉)が放った痛烈な一言で場が凍りつきかけたのをなだめる亜哉子の姿はまさにみんなのお母さんで、いかにも先生らしかった。「はい! とにかくみんな家帰って寝る。そして朝起きて働く! わかった? 返事は?」と絶妙な関与度合いで、誰のことも咎めず、後腐れを残さない。

 その後、百音に「簡単じゃないのよね、亮くんも。みんな必死」と、この短い言葉に様々な人の苦悩やそれぞれが考える正義への配慮を含み、百音のことも亮のこともそっと包み込んだ。

 亜哉子の魅力はどんな人も見捨てず、誰よりもその人の“応援団”であろうとし、全力で肯定してくれることだ。彼女はとにかくあったかい。

 若かりし頃、自分のトランペットに自信を失いかけていた耕治(内野聖陽)に「正しくて明るくて、ポジティブで前向きであることが魅力にならない世界なんてクソです! どこまでも明るい、吹いている楽器の音まで明るいこの人は、最高に素敵です! 陰が魅力だとか、不幸が色気だとか、そういう安っぽい価値観で汚さないでください!」と言い切ったあの姿はいまだに鮮烈で、最高に格好良く、何よりの最上級の愛情表現だった。

 アルコール依存症の治療にあたる新次(浅野忠信)の元にも内緒で通い、ずっと様子を見守っていたし、百音と未知(蒔田彩珠)には常々「好きなことやりなさい」「あなたたちにはとにかく楽しそうにしてもらいたい」と、2人の娘の“やりたい”を全力で後押しする。義母の雅代(竹下景子)のことも“尊敬している憧れの人”だとし、彼女がかつて営んでいた民宿を再開できないか考えている。改めて振り返ると、どれだけ周囲に対して献身的なんだ……と感心させられるが、何より亜哉子は“人”が好きなのだ。人の“想い”に敏感で、それをとても大切に扱う。新次のことも、その裏に妻・美波(坂井真紀)の想いや、そこに耕治が加わった記憶の中の幼なじみ3人の姿を感じているように思える。大切な存在を、場所を迷いなく全力で守ろうとできるのが亜哉子だ。そして肝心な時に勇気を振り絞れるのが彼女だ。

 そして彼女は、誰かを応援することに“自己犠牲”を滲ませない。あくまで“自分が気になるから”“自分が好きでやっている”という気持ちが全面に出ており、だからこそ押しつけがましさもお節介さも感じさせないし、“自分のことは後回し”感も色濃く投影されない。そして彼女は相手の一面のみを切り取って決めつけるようなことは決してしない。義父・龍己(藤竜也)の牡蠣養殖業を手伝い、基本的には家か作業場にいる彼女だが、“母としての顔”だけに終始しないのも、彼女が様々な関わり合いの中で自分をいまだに再発見し続けているからではないだろうか。

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