志尊淳×吉沢亮の熱い抱擁から滲み出る信頼感 『青天を衝け』が描いた郵便制度の一歩目

 大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)第29回「栄一、改正する」で、栄一(吉沢亮)は各省の垣根を超えた特命チーム「改正掛」を立ち上げる。

 新政府は一向に制度も整わず、外国には文句の言われ放題、さらに財政難。日本そのものが危機という混乱状態において、様々な改革を進めるべく、大局的な観点から議論と決定を行う部署が改正掛である。

 第29回のアバンを締めくくる栄一のセリフ「さてと、時が足りねぇ!」が示すように、改正すべきことは山積みであった。租税、貨幣、丈量、駅逓、戸籍、殖産興業、電信……といった具合に。明治4年3月、改正掛の成果の一つとして栄一は郵便制度を開始させる。今では生活のインフラとして当たり前のように使われている郵便であるが、宿場の「郵」に、頼りの「便」で郵便といった名前の由来や、切手、郵便印の始まりが描かれるのは実に面白い。新しい飛脚制度の確立に携わるのが、栄一と共にパリに渡り、親交を深め、自身を「渋沢の友」と呼ぶ杉浦譲(志尊淳)である。

 郵便制度の創設後、最初の一通が試験的に送られるのが、杉浦の弟の下。上手くいけば3日後に返信が手元にやってくる。「郵便です」と今では当たり前に交わされるその言葉に新鮮さを覚え、切手が剥がれていない、印も押されている。思わず、杉浦は「届いたぞー!」と叫び、栄一と熱い抱擁を交わす。それは栄一の新政府行きを後押ししたあの時とは違った、郵便制度という新しい国づくりを一歩進めた喜び、達成感の抱擁。パリに渡った使節団の中では、徳川昭武(板垣李光人)に並び、長い活躍を見せている杉浦。一貫してあるのは、時代を切り開いていく栄一を支えたいという思い。武士に生まれながらも、学問に秀でていて、気品がある。それでいて内に秘めた熱い思いを持つ杉浦を演じる上で、志尊淳は適役だったと言えよう。

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