俳優のオーディション番組は浸透する? “スター”と“推し”、発掘の違いから探る

俳優のオーディション番組は“若手俳優の登竜門”としての見込みも?

 では、未来の女優を発掘する『ワタジョ』はどうだったのか。事務所に所属し基礎的な技術を身に付けた女優をオーディションで選ぶのではなく、番組を作る側のTV局が主導でまっさらな状態の女の子たちを将来、ドラマや映画で活躍する女優に育てるというコンセプト自体は新しい。そもそも近年の映像作品におけるキャスティングは指名制、もしくはオーディションで決まっており、視聴者側にその内容が公開されることは少ない。かつて“若手女優の登竜門”と呼ばれた朝ドラでも、最近は有村架純、杉咲花、清原果耶など、世間にも名前や実力が知られた女優がヒロインに抜擢されている。そのため普段は見ることができないオーディションの模様が公開される貴重な機会であり、未来の女優が誕生する瞬間を見届けられるという点に高揚感を抱く視聴者は多いはずだ。

『私が女優になる日_』最終演技バトル20② 飯沼愛 VS 三浦涼菜

 ただ、TBSの『サンデー・ジャポン』や『アッコにおまかせ!』等でも番宣が行われたにもかかわらず、番組公式Twitterのフォロワー数は3,850人と、先の虹プロや『THE FIRST』ほど知名度が高かったとは言いづらい。その理由の一つとして挙げられるのが、プロ目線の番組構成だろう。他の番組が練習風景や参加者同士のやり取りにも放送時間を割いたのに対して、『ワタジョ』の構成は至極シンプルで、あくまでも番組の大半が演技バトルと審査員による評価の時間だった。もちろんその中でも参加者一人ひとりの個性や魅力は十分伝わってきたが、デビュー前からガッチリとファンを獲得するには少し厳しい条件だったと言える。

『ワタジョ』を勝ち抜きドラマ出演が決定した(写真左から)三浦涼菜、飯沼愛、武山瑠香、赤穂華

 しかしながら、映画『おっさんずラブ』の徳尾浩司や人気漫画家・青木琴美、劇作家・根本宗子らが演技バトルで使われるオリジナル脚本を手がけ、審査員にTBSの『半沢直樹』や『MIU404』などのヒット作を手がけたドラマ製作陣が審査員を務めるなど、スタッフの人選からも一大プロジェクトを成功させようという本気度は伝わってきた。映像作品で数々のムーブメントを起こしてきたエンタメ界の重鎮たちが総力をあげて選んだ原石とだけあって、もし10月からスタートするドラマ『この初恋はフィクションです』で選ばれた4人が強いインパクトを残せば、遡ってプロジェクトにも世間の目が向けられるだろう。例えばミュージカル『テニスの王子様』は城田優や瀬戸康史、志尊淳といった数々の人気俳優を輩出し、“若手俳優の登竜門”として注目されるようになった。同じように俳優・女優のサバイバルオーディションも実績が積まれていけば、世の中に浸透していくかもしれない。

■放送情報
『この初恋はフィクションです』
TBS系にて10月11日(月)スタート、毎週月曜~木曜深夜24:40~24:55
※一部地域を除く
企画・原案:秋元康
脚本:徳尾浩司
プロデューサー:松本友香、韓哲
演出:宮崎陽平、岡本伸吾、小牧桜
出演:飯沼愛、坂東龍汰、窪塚愛流、武山瑠香、三浦涼菜、赤穂華、飯塚悟志(東京03)、矢田亜希子、坂井真紀
製作著作:TBS
番組公式サイト:https://www.tbs.co.jp/hatsukoi_f_tbs/

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